低軌道衛星通信が全世界にインターネット環境を提供出来るようになれば、既存の地上基地局によるインフラの大部分を代替し得るのではないかと思います。

通信エリアを維持拡大するための主な争点は、基地局への継続的な投資コストです。これは、設備の劣化や 4G/5G といった通信技術の進化に応じて発生します。地上の場合は平地だけでなく山間部や海上に建設する必要がありますが、宇宙の場合は地上に比べて潤沢な空間があり、端的に言えば発射するだけでカバレッジが増えます。

これは日本に於いて顕著です。山間部が多いという地理的な事情に加えて、都市部はともかく地方都市の過疎化が進む中で経済合理性が生まれず、既に 5G 通信を提供しにくい地域が存在しています。スターリンクをバックホール回線として利用する基地局が誕生するなど、既に低軌道衛星通信への依存が始まっており、地上でのインフラ維持が難しいことも物語っています。

基地局となる衛星ひとつひとつの開発や運用に必要なコストも、技術の進歩によって基本的には汎化していくことが予想されます。故に、低軌道衛星通信のコモディティ化が進み経済合理性が高まれば、既存のインフラ規模は縮小していくと予想します。

低軌道衛星通信の進化は非常に楽しみな一方で、スターリンク社以外の企業が台頭せず業界が寡占になったり、宇宙ゴミ(スペースデブリ)による既存の人工衛星や天然衛星、そして地球環境への影響などの懸念は依然として存在しており、今後避けて通れない課題です。それ以外にも、地上との物理的距離や天候や建物などの遮蔽物に左右される通信品質の議論もありますが、地上基地局のバイパスを必要とするような顕在化した課題であるかはわからず、むしろ地上の通信基地局に依存しない進化を模索するのではないでしょうか。

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