日本共産党は戦前からの長い歴史を持つ政党で、太平洋戦争中も反戦を貫くなど、ずっと自主独立の立場を保ってきました。その存在に価値を感じている人は決して少なくないと思います。同党のさまざまな政策についても賛否両論はありますが、決して全否定されるようなものでもありません。

多くの日本人が共産党に拒否感を感じているとすれば、それは「党内で分派をつくらない」「党の統一と団結に努力し、敵対行為を行わない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表しない」といった日本共産党の「民主集中制」の原則に対する拒否感ではないかとわたしは考えています。なお民主集中制はレーニン時代のソ連にまでさかのぼる、共産主義政党の伝統的な考えかたです。

なお上記の民主集中制の原則の記述については、東京新聞2023年2月8日掲載の「共産党が党改革を訴える本を出版した党員を除名 『異論排除ではない』というけど…市民感覚からは?」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/229883) からとったものです。

戦うためには統一と団結が必要という考えかたは、昭和の時代には日本共産党のみならず一般企業などでもよく見られた価値観でした。しかし21世紀の現在の日本社会では、政党も企業もよりオープンになるべきであり、ウチとソトを分けるのではなく、内外をシームレスにして活発な議論を行い、しかもその議論がつねに可視化されるのが良い、という価値観に変わっています。

現代のわれわれが最も拒否感を感じるのは、「オープンではないこと」「可視化されていないこと」「批判に応えないこと」などの要素でしょう。これらは実のところ新聞テレビなどのオールドメディアにも当てはまるところがあるのですが、民主集中制をとっている日本共産党もまさにこれらの要素を抱えたままになっていると言えるでしょう。

そして上記の東京新聞の記事にあるように、分派活動や外部で批判の意見を発表した党員に対しては「除名」という厳しい処分で臨むというケースが、最近も相次いでいます。こうした頑なさに対する反発が、日本共産党への一般社会の拒否感の主因ではないでしょうか。

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佐々木俊尚さんの過去の回答
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