これはやばい質問です。簡単そうに聞こえるけど、考えてみると簡単で満足のいく説明は出てこない。逆に次々といろんな疑問がわきあがってきて、最後は液体の物理学というやっかいなものにつながっている。何が言いたいかというと、私にはお手上げです。もうこのまま逃げたいくらいくらいなんですが、どんな風に悩んでいるのか聞いてもらうことにしましょうか。

光が物質にあたって吸収したり反射したり、透過したりする。これらはすべて光(電磁波)が電子を揺らし、そのとき電子がどう動くかによって決まっているはずです。金属というのは、そのなかの個々の原子にとらわれずに自由に動ける電子がいて、おかげで電気が流れるという性質があります。光を当てるとこの電子が電磁波の振動に合わせて揺れ、それがまた電磁波を放出する。ちょうど波の位相が合う方向で放出した電磁波は強め合う。これが反射ですよね。

ガラスには自由に動ける電子というものはいません。ガラスに電気は流れませんよね。電子は個々の原子のそばにしばりつけられている。そこに電磁波があたるとやはり電子はゆれるはずです。ただし、金属中の電子みたいに自由には動けず、制限されたやり方で揺れるしかない。つまり、まずもって電子は動きにくいでしょう。おかげで電磁波はあまり減衰せずに中に入りこんで行くことになります。でも問題はここからです。

もし原子が規則正しく並んでいたら、そこに光(電磁波、つまり波)をあてたときに規則正しい波をつくります。その波がまた電磁波を放出し、ある方向にやはり強め合うこともあるでしょう。ただし、金属みたいに勝手な波は許されず、波長に応じてある決まった角度でだけ強め合うようなことが起こります。結晶というのは、透過も反射もする。おかげでダイヤモンドはキラキラ輝きます。

この結晶があまりきれいでなく、裂け目があちこちにあるようだと、反射する光があちこちにぶつかってまっすぐ進めない。乱反射ですね。これが極端になると、透過も反射もできなくなるわけです。不透明。

さあ、ガラスです。聞いたことありますか? ガラスは液体なんだそうです。冷えて固まったように見えるけど、規則正しい状態に落ち着いたわけではなく、原子のつながり方はでたらめ。ゆっくりと動き続けているのだとか。この「でたらめ」が重要になります。ある方向に光をきれいに反射することがない。どこにも強め合う方向がないせいで、光はそのまま透過していく。だからこの「でたらめ」という性質がミソだというわけです。そういえば、水だって液体、そして透明ですね。

さて、納得できましたでしょうか。いやあ、実は書いている本人がすっきりしていません。だって、ダメなところがすぐに思いつきますよね。考えてみてください。光を吸収する物質と透過する物質はどう違うのか。透過する場合も物質中の光速は遅くなります。ミクロに見るとどうなっているのか。原子の並びのデタラメ度合いはどれくらい必要なのか...。

私も物理学者の看板を掲げているとはいえ、こんな問題はまったくの畑違いです。私の説明を専門家の方が読んだらあきれるかもしれません。まあわからないと言っているだけなんですが。物質のなかの電子はいったいどうなっているのか。私にはミステリーです。想像すると楽しいんですけど。

1年1年更新

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橋本 省二さんの過去の回答
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