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I. S.

新型コロナウイルスが流行した際に、スマートフォンの Bluetooth Low Energy 機能を使って匿名で感染者を追跡・通知するアプリが開発されましたが、当時、仕様策定や開発が進む様子を報道で見ていて、日本とスイスでは大分違うなと感じていました。

スイスでは、まず連邦政府機関である BIT (Bundesamt für Informatik und Telekommunikation; 連邦情報通信局) と、国を代表する理工系大学である ETH Zürich(チューリッヒ工科大学)、ならびに École polytechnique fédérale de Lausanne (ローザンヌ工科大学)が中心となり仕様策定が行われました。 必要な機能を実現するため Appleと Google にも協力を要請し、最終的に、Android と iOS に API が追加されています。

実際の開発は Ubique というソフトウェア開発企業に委託されましたが、ここは富士通 Japan のような SI 大手ではなく、社員数数十名程度の小さな企業です。従業員の大半はソフトウェアエンジニアで、大学で情報工学を専攻した経歴の持ち主です。

一方、日本は感染者の追跡・通知アルゴリズムの議論には参加せず、Apple と Google が API を提供してから日本向けのアプリケーション開発の仕様策定を始めています [1]。

またコロナ接触確認アプリ COCOA の開発・運用は厚生労働省の担当でしたが、厚生労働省はパーソルプロセス&テクノロジー社に業務委託を行い、さらにそこから再委託、再々委託が行われています [2]。

スイスと日本の違いは、おそらくスイスは政府内部にソフトウェア開発に関して知見がある人がおり、専門家を取りまとめて議論を進めたり、プラットフォーマーを巻き込んで仕様策定を進めることができるのだと思います。また実際のアプリケーション開発・運用の段階でも工程管理を SI 企業に丸投げせず、少数精鋭の開発者集団と直接やり取りしているように見受けられます。

[1] 接触確認アプリに関する仕様書等の公表

[2] COCOA開発受注企業が事業費94%を3社に再委託、さらに2社に…不具合の原因企業「分からない」

1年1年更新

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