この質問自体に、若年層に限らず広く日本の有権者全般の政治への関与が低調な構造が示唆されているように思いますね。

 「施策」は、その実施主体や目的を伴って初めて具体的な議論を起こすことができるものです。しかし、たとえば投票率向上を論じる際、「誰が」、「何のために」が明確かつ意味のある形で提示されることは見たことがありません。本人は真面目なんでしょうが、傍らからは虚空に向かって「投票の大切さ」を訴えているように見えます。

 一般的な回答を模索すれば、明るい選挙推進協会のような公的な投票率向上目的の団体やプロジェクトを主体として設定することは可能です。しかし、行政が投票を訴えたらそれこそ「政治的」なものになります。それこそちゃんとやれば、政権支持的な動員を集める権威主義体制の国家になります。標語やポスターを未成年から集めるような、投票義務感を何となく醸成する程度の効果の期待できない施策を並べる日本の投票率向上運動は、その意味では民主的な運営がなされているとも言えるでしょう。

 それでは、投票や政治への関与を呼びかける主体は誰で、何の目的があってそれをするのであれば意味のある議論になるでしょうか? その答えは、政治的中立を求められる国家統治に関わる組織ではなく、政治的競争の当事者である政治家や政党ということになります。質問の「施策」を行う利益があるのは、票や支持を集める目的のある立場の人々だということです。

 以下、政党を施策の主体とすれば、そのための取り組みを提示するのは非常に簡単です。若者の支持が欲しいなら、党で若者を多数登用、重用することが一歩です。対象である若者から遠い高齢者が理論や想像で若者向けの施策を練ったところで、聞く耳を持たれないことは言うまでもないでしょう。

 図には日本の18歳以上人口と衆議院議員の年齢層別の割合を人口ピラミッドの形式で示しましたが、国会では39歳以下の若年層の割合はかなり低いです。単に高齢者の割合が高いというだけでなく、政界では高齢者が“偉い”ので若年層が進出してもリーダーや幹部に即登用とはならず、どんなに政策的に有能でも「下積み」を要求されます。これでは若年層に政治が見向きもされないのは当然でしょう。

 もちろん、立候補可能年齢等の制度上の制約もあり、地元重視の選挙制度の問題もあり、国会議員や候補の若年層割合を劇的に増やすことはすぐには無理でしょう。でも政党の組織なら原理上簡単に変えることができます。端的にやる気の問題、やるかやらないかの問題です。

 20歳を幹部にし、中高生代表を議論に呼び、小学生からも意見を聞くくらいするとよいですね。それくらいしていかないと、「若者の意見を聞いた」、「若者を代表している」と言ったところであまり説得的ではないでしょう。

 政党や政界に若年層が増えていけば、政治に関わる若者も必然的に増えます。政治的争点に若年層の問題が増えていけば、関心も高まるでしょう。投票に行け、政治に関心を持てと高齢者が若者を詰るよりも、政治は高齢者のものという印象を変えていくことが大切ですし効果的と考えます。

10か月

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