普段からよく物理を考えていらっしゃることが窺える、素晴らしいご質問だとおもいます。まずは非相対論的な粒子の量子力学でご説明いたします。ある粒子のある状況下での時間発展を記述しているハミルトニアンがH=(p^2)/2m+V(x)と書かれるときに、このmをこの状況下でのこの粒子の慣性質量と呼びます。これは重力ポテンシャルV(x)=m'g xに現れる、m'という重さ(重力質量)とは量子力学でも概念的に区別をされています。たとえば量子力学での等価原理を論じるときには、真空中にその粒子を置いて、他の粒子や環境系との相互作用をさせずに重力だけがある設定で、粒子の種類によらずに実験データ上でm'=mとなるかどうかを問題にしています。ただ多粒子を扱う物性系では、有効質量m*という概念も使います。それは粒子がその周りにある原子核や他の電子からの相互作用を受けて、そのハミルトニアンが修正を受ける場合に出てきます。注目している粒子の時間発展が物質中でH=(p^2)/2m*+V(x)で近似的に書けるようになる場合のm*が有効質量です。一般には周囲の物質の効果でm*は真空中のmとは異なります。次に相対論的な場の量子論の話も触れておきます。そこでも基本的には物性系と同じ考え方で、慣性質量、重力質量、有効質量ができてます。ただし通常の解析では、ハミルトニアンそのものに遡らずに直接実験から同定できる場の2点関数というものから慣性質量や物質中での有効質量が定義されています。重力質量は重力場中にその場の励起である粒子を伝搬させたときの運動から決めます。なお場の量子論では不安定粒子も出てくるので、その崩壊率を純虚数の係数として慣性質量に足すことで、複素数として表記していることも多いです。ご参考になれば幸いです。

1年1年更新

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堀田昌寛さんの過去の回答
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