私が挙げるのは「勇気爆発バーンブレイバーン」です。
面白いと思う理由は、「既成作品を踏まえた”新ジャンル”」である点です。
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ブレイバーンは勇者王シリーズと呼ばれるロボットアニメに分類されるそうです。
そのお約束はこの辺にまとめることができるでしょうか。
・主人公を助けてくれるロボットがいる
・このロボットは意思を持ち、主人公を助けてくれる⇔意思を持たないロボットもの(ガンダムなど)
・ロボット専用のエンブレムやテーマソングがある
こんな所でしょうか。
ブレイバーンはこうした勇者王シリーズの伝統を踏まえた上でそれを”分解”するようなことをしています。これが面白いです。
1.主人公の窮地にロボット「ブレイバーン」が駆けつけるが、主人公はブレイバーンと面識がない。なのにブレイバーンは主人公に名前で呼びかける
2.戦闘シーンで本当にテーマソングが流れている。主人公の「なんだこの音楽はぁ!」というセリフで確認できる
3.ブレイバーンがエンブレムを出して決めポーズを決めると、エンブレムが現実に投影されていることがわかるシーンがある
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以上にように「アニメだから」「お約束」として手をつけられていなかった部分に逐一手をつけて、それによって「ブレイバーンはなぜ主人公の名前を知っているのか」「なぜテーマソングを流すのか」といったことを視聴者に対する謎として提供しています。
この手法自体が既成作品の長い歴史を元にしていることが歴史学者としては興味深いです。
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以上に加え、上記の手法が創作の技法として定着しつつある(あるいはすでに定着していた)ことが興味深いです。
たとえば仮面ライダーも「バイクに乗るヒーロー」として現れ、「バイクに乗らない仮面ライダー」が描かれました。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/28/news132.html
アメコミの分野では数多のマーベルヒーロー等を下敷きに漫画『ウォッチメン』が作られました。ウォッチメンのヒーローたちは一人を除いて超能力を持ちません。ただ意思と行動が常人と違うためにヒーローとして戦います。またその敵もベトナム戦争であったり、冷戦(すなわち核戦争)であるなど、既存のヒーローものを踏まえつつそれを現実に落とし込むアプローチを取っています。
https://books.shopro.co.jp/?contents=9784796870573
books.shopro.co.jp
また国内でも広くヒーローものの浸透を受けてそのパロディ作品が生まれています。
https://www.b-ch.com/titles/2244/
https://tonarinoyj.jp/episode/13932016480028985383
ある作品が「型」として定着し、また新しい作品を作る。
またその際、土台とされた作品(ブレイバーンでいう勇者王シリーズ)の説明は省かれるが、それを視聴者は当然知っているという前提、実に興味深いものです。
ブレイバーン自体も良い作りのアニメなのでおすすめしますね。