多拠点生活を、コスト、体力、精神力の3つの要素に分解してみましょう。まずコスト。私の拠点は東京・長野・福井なので新幹線移動の交通費がバカになりません。このコストを減らすためには距離の近い拠点を選ぶなどを考慮した方がいいと思います。また拠点を増やすたびに、家財道具をまるまる一式用意しなければならないという初期コストもあります。洗濯機、冷蔵庫、オーブンレンジなどの大物のほかに、細かいキッチン道具や日用雑貨などをゼロから揃えるのはけっこう面倒であるということも忘れてはなりません。
体力。慣れていないと、毎週のように移動するというのはけっこうたいへんです。「旅行にいったら楽しかったけどぐったり」という経験をお持ちの方は多いでしょう。この疲れの要素の多くは、移動の疲れです。なので、ある程度の体力作りは必須。あとは慣れれば、さほど疲れなくなります。鉄道などで移動中はなるべく身体を休め、スマホを夢中になったりしないで目を瞑って静かに瞑想するなどを心がければ、疲れは軽減されます。
精神力。「定住が当たり前であり、移動するという行為はイレギュラーである」という常識から外れ、「移動こそが当たり前の日々である」という理念を身につけることが、多拠点生活の精神だとわたしは考えています。振り返れば太古の昔、狩猟採集時代には人類は小規模な共同体を構成し、みな移動しながら暮らしていました。「ムラ社会」と自虐的に言われる日本人だって、もとをたどればアフリカから最も遠くのこの極東の地までやってきた氏族なのです。われわれのDNAには、移動生活の精神が刻み込まれていると考えることによって、移動に対する精神的なハードルを軽減することができると考えています。
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