お金の使いかたで難しいのは、自分の欲望のためだけの消費なのか、それとも長い目で見れば学びや貴重な体験になり得る消費なのかという区別が付けにくいことだと思います。たとえば新しい電子ガジェットがほしい、みんなが行ってるらしいあの新しいテーマーパークに行ってみたい、あるいは推してるアイドルのライブコンサートに行きたい。それらは欲望のためだけの消費なのか、それとも自分にとってかけがえのない良き体験として蓄積されていくものなのか
。
考えてみるとわかると思いますが、どちらとも言えないことが多いですよね。新しい電子ガジェットは単なる物欲にも思えますが、最新のテクノロジーの触れられるという学びもあるはずです。学ぼうと思えば、あらゆるところには学びがある。いっぽうで学ぼうとする意志が希薄だと、どんなにお金を投じても単なる消費で終わってしまい、学びにはつながらず体験として蓄積もされません。
かといってお金は有限です。さらに言えば、お金を使うことによって得られるさまざまな体験には時間が必要で、使える時間も有限です。自分の使える範囲であるお金と時間を、どう有意義に使えばいいのでしょうか。
さまざまな考えかたがあるでしょうし、ただひとつの正解があるわけでもないでしょう。そこでひとつのアドバイスとして、わたしがとっている方法を紹介してみます。それは「それに欲望を感じないけれども、自分の学びや体験になると予想できることには、惜しみなく金を使う」という方法です。
わたしの場合、それは書籍です。たとえば昨年末、わたしはトマ・ピケティという経済学者の大著「資本とイデオロギー」のキンドル版を購入しました。けっこう思いきった消費でした。なにしろ総ページ数1000ページ以上、値段は7000円近く。おまけに読んでいてそんなに楽しそうな本でもありません。「これを全部読むのかあ、かったるいなあ」というのが正直なところ。つまりピケティの本への欲望はまったくなかったのです。
しかしこの本は重要だとわたしは考えていました。世界で起きている格差社会の現状と、それが左右のイデオロギーとどう関連しているのかというのは、2020年代の現在において必須の知識だと言えるでしょう。なので「欲望は感じないけれど、自分の学びになることは強烈に予想できる」と考えて、7000円を投じることにしたのです。
わたしにはこのようにして購入した本がたくさんあります。楽しみの本も読むことは多いのですが、同時に学びのための本にけっこうな高い金額を投じることも多々あるのです。欲望と学びのバランスが必要ということです。この方法がお金の使い道としてただひとつの姿勢とはまったく思いませんが、参考にしていただければ幸いです。