撮影現場の専門職スタッフをなさっているとのことですね。これは大きな強みになるのではないでしょうか。あなたにとっては日常でも、一般の人には分からない業界特有の良さ悪さがたくさんあると思います。そんな中から具体的なテーマを探し出すことは出来ませんか? 脚本家業界に若い人重視の空気がある、それは文芸の世界でも同じかも知れません。若い人を惹きつけたい、若い人たちに見てほしいと思う気持ちは、どこにでもある、一つの風潮になっているのかも知れません。しかしその結果、ひどく薄っぺらい、またはあまりにも現実離れしている、一方で重苦しく見るに堪えないものが増えているというのも現実ではないでしょうか。
ところで私は韓国ドラマが好きで、時間があれば見るようにしているのですが、韓国ドラマのどの部分に魅力に感じるかというと、たとえば若い人たちの恋愛ドラマであっても、その家族、脇役を務める人たちに、中高年の役者さんたちをまんべんなく使っているところだと思っています。主人公達の恋愛その他は、もちろん魅力的なのですが、中高年層が見ても感情移入出来る、「こんな人、いるいる!」と思えるように、従って家族揃って一つのドラマを様々な視点から見ることが出来ることが、素晴らしいといつも思います。何も、すべての世代の人たちに支持されなくても良い、という考え方もあります。ですが、ある限られた世代の人たちしか見ないというドラマには、重厚さが欠けている、どこか現実離れした感じがあると、私などは感じてしまいます。この世の中には老若男女がいて、それだけはどこに行っても変わることはありません。それを忘れずにいることが大切だといつも思います。
あなたは今年で40歳になられるとのことですね。それくらいの年齢ですと、プラスマイナスそれぞれ20年くらいの人たちを描きやすいのではないかと、小説家の場合は言われることがあります。つまり、二十代の若者から六十代の熟年まで、思いを巡らせることが出来る、いちばん「おいしい」世代に差し掛かっている可能性があるということです。
ですから、文章・シナリオの原点である起承転結や視点の置き方に気をつけて、まずは正しい基本を身につけながら、様々な世代の人たちを描くことに気をつけると良いのではないかと思います。この仕事にスタートの遅さは関係ないと思いますので、是非とも頑張ってください。