本を探す際には、「ネットや本などでの評価・推薦を探す情報収集」と「実際の本を手にしての確認」の往復をしながら、本を絞り込んでいきます。書店で適当に本をとるのだと、残念ながら変な本、トンデモ本である可能性が少なくありません。選定が重要です。

まず「良い本」というのは

1:内容がしっかりしている(トンデモではない)

2:自分の保有する予備知識の水準にあっている

3:自分の知りたい内容が出ている

といった条件が満たされている本です。1は客観的基準ですが、2,3は人によって異なる基準です。

1について自分ですぐにできることは、「煽っている本」「攻撃的な本」「何かを強く非難・糾弾している本」を避けることです。もちろんこうした本の中には妥当な見解が述べられている本もないわけではないですが、地雷率が非常に高いので、地雷の中の「妥当な見解」を探しに行くのは、十分な見識を身につけた後にすればよいです。不慣れなうちは、政治的な本(政府はよい/悪い、日本社会はよい/悪い、みたいな主張が全面に出ている本)自体を避けて、より俯瞰的な本(民主主義の理論と考え方、など)で基礎知識を付ける方が無難です。

見た目は穏当な本の内容の信頼性を知りたい場合には、まずは著者がどういう人か、その内容の専門家なのか、を確認してみるのがよいでしょう。著者が大学教授であっても、その人の専門分野と関係ない内容の本であれば、大学教授の肩書は特に信頼性を挙げることに寄与しません。確認したければ、その人が近い内容の論文を(オピニオン誌とかではなく)学術専門誌に出しているかを調べることも出来ます。学術性の比較的高い本について、その内容が通説なのか異端説なのかを知りたい場合には、CiNiiで学術誌に出ている書評を探すという方法も有効です。逆にこの目的に対して必ずしも有効「ではない」のは、新聞や雑誌の書評欄です。多くの場合、評者は一定期間内の新刊本の中から規定冊数の本を肯定的に紹介することが求められており、そのため自身がその分野に詳しくない(=内容の真贋の検討は出来ない)本を、専門家の検討を経る前に好意的に紹介することになってしまいます。

2と3は「本そのものはよいが、あなたが想定読者になっていない」という事態を避けるためのものです。特に2は注意が必要です。全く予備知識がないのに中級者向けの水準の高い本を読んだら挫折するでしょうし、逆にそれなりの知識を持っているのに予備知識ゼロの人向けの本を読んでも知っていることだらけで時間の無駄でしょう。こうした問題は、書評を見ることである程度避けられます。Amazonの評価もそれなりに参考になります。ただしAmazonで重要なのは、星の数よりも「どういう理由でその人が評価している/していないか」です。もしあなたが全く予備知識がなくて入門書を探しているのならば、「簡単すぎてつまらない」という低評価は気にしなくてよい一方、「初心者には難しすぎる」という低評価は大いに気にする必要があります。本を手に取れる状況なら、最初の一章ぐらいをパラパラ見てみれば、どのくらいの前提で話が進んでいくかはある程度は分かると思います。3は本の中身が見れる状況ならあまり生じない問題ですが、本のタイトルと宣伝文、帯とかからイメージされる内容と実際の中身が大きく食い違っている本はしばしばあります。目次を見るなどして、目的に合わない本は避けるようにしましょう。

ここまでの話は、本の候補はある場合に、それがよい本かどうかを絞り込む方法でした。そもそも「本の候補」をどうやって見つけて来るのか、も大きな問題です。以下、知りたい方向・分野の本を探してくる方法について書きます。

ネットで探す際には、Amazonや大学OPAC、研究者のHP(講義の指定教科書や研究内容に興味がある人向けの図書案内などがあることも)、専門的知識があると思われる人のブログ記事(本の紹介など)などを用いています。Amazonは関連書籍が多数列挙されているので、それを使うと似たような対象を扱う本を探すことが出来ます(ただし最近は、おススメ欄がそのページの本と関係のない「ただよく売れている本」の広告だったりしてうまく機能しない場合も少なくないですが・・・)。また、レビューの中には類書との比較をしているものもあるので、それも本探しの参考になります。学術的な本を探している場合には、東京大学図書館のOPACには、関連書籍が最大10冊表示されるので、それを使って本を探すことも出来ます。候補が大量になって構わないのなら、書誌情報の「件名」を使って当該ジャンルの本を丸ごとリストして、それを見ていくことで探すことも出来ます。専門的知識のある人によるブックガイド記事が見つかればそれも大変重宝します。

自分が知りたい対象or近い対象を扱った、内容がしっかりした本の中身を見れる環境にある(すでに持っている/書店や図書館で手に取れる)ならば、その本の参考文献から芋づるに本を探すのも極めて有力な方法です。この場合、先述の2や3の条件に合わない、あるいは単にその著者の書き方と好みがあわない、といった理由で、その本自体を読むつもりがなくても、その本の参考文献リストは本探しに大いに役立ちます。また、内容は自分が知りたい対象だが2や3の条件を満たさない(自分には難しすぎる、など)、でも著者は信頼できそうな本が見つかった場合には、その著者が難易度水準や力点が異なる(自分が探しているような)本を書いている場合もありますので、その場合には著者検索をかけることで見つけることが出来る場合もあります。

最後に、良い本を見つけている人は、往々にしてハズレの本もたくさん引いています。勿論ハズレの本をたくさん買っているだけの財布の余裕も本棚の余裕もない人は多いでしょう(私もそうです)。そういう人は是非図書館を有効活用しましょう。よいかも、と思った本はとりあえず図書館で予約して借りてみましょう。図書館で借りてみて内容がハズレなら、返して次の本を借りればいいのです。たくさんの本を手に取ることで、当たりの良い本にもたくさん巡り合えるはずです。

11か月

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