おっしゃるそのあたりのお店で食べていると、
「人はもしかしたらこれ以上のおいしさを求める必要はないのではないか」
みたいな不思議な気持ちになることがあります。おいしさがいったんそこでカンストしており、そこから先はあくまで趣味の問題なんだろうな、という感覚。この場合の「趣味」とは、個人個人の嗜好の差もありますが、それ以上に「食に対してどれだけ物理的・精神的リソースを割くことができるか」の意味合いが大きいです。
以前、仕事仲間でファミレスの安いランチを食べていた時、その中の1人がこんなことを言いました。
早合点して気分を害する人がいるといけないので先に言っておきますが、これは渾身の「ネタ」です。それはこういうものです。
「庶民は毎日こういうものを食べてるんですね」
お分かりでしょうか。飲食業従事者という庶民中のド庶民がそれを言う、というところがこのネタのネタたる所以です。つまり、店での賄いが食生活の基盤となっており、たまの外食は視察の名目で評判の良い繁盛店に行く、そんな我々はやっぱり特別なんだよねえ、という内輪だから通用するネタというわけです。自分たちが当たり前だと思っていることは決して当たり前ではない、という戒めのニュアンスもあります。
まあこの時は特別安いランチでしたから、少なくとも特別な喜びのあるものではありませんでした。しかし今のファミレスは昔と違って周りの店より少し高い業態ですから、少なくとも中心価格帯以上のものを選べば、そこには何らかの特別な喜びも演出されています。それで満足できない方がおかしいと思うわけです。
2年ほど前だったか、相談者さんも挙げているお店のひとつで、10種類ほどのメニューを一度に試食するという仕事をやらせてもらったことがあります。結論だけ言うと、全てが予想以上にうまかったんですよね。非の打ち所がない、という表現が最も適切ですが単にそれだけでもない。
そろそろお気付きかもしれませんが、僕はこの相談に何ひとつ回答できていませんし、たぶん最後までできないと思います。なぜ自分がそんな「中級ファミレス」に自分の意思で行きたくなることがほとんど無いのか、その理由が自分でもさっぱり分からないからです。
質問者さんはライフステージの中で、おそらく今がファミレス全盛期ということになるのでしょう。せっかくなので「なぜこういったものに満足できないか」「実は満足できる方法があるのではないか」みたいなことと向き合ってみるのも有意義なのではないでしょうか。
僕のさほど豊富とも言えない経験からではありますが、アドバイスめいたことを最後に付け加えておきます。
・節約したい人のために(ちょっと無理して)用意してる感じのものは避ける
・フェアメニューには(ファミレスらしからぬ)地雷が含まれる
・冷やし麺系は謎にうまい