根無し草の移動生活者にとっては、地域とどうつきあうのかというは難しい課題です。「ゴミ集積所が使えない問題」「草刈りを手伝うかどうか問題」などいろんな話が付随してくるのですが、ここではご質問にある人と人の「関係性」に絞ってお答えしましょう。 わたしが地方で心がけているのは、「面でつきあわず、線でつきあう」という人間関係です。面でつきあうというのは、町内会や消防団水防団などに加入すること。それ自体は決して悪いことではないのですが、この方向で地方共同体の一員になってしまうと、地方特有の息苦しさや同調圧力につきあわなければならなくなってしまいます。 わたしの知人で、ある田舎町に引っ越してきたお医者さんがいました。彼は町の人たちとは一定の距離を置いてつきあっていたのですが、ある年の夏に「○○さん、今年は地域の夏祭りに参加してはどうか」と誘われ、気軽な気持ちで「いいですよ」と参加して神輿などを担いだそうです。すると町の人たちは態度が一変し、「○○さん、あなたはこれで町の一員になったんだから、これからはこの町で暮らす覚悟を持たないといけないよ」と言われ、共同体のメンバーとしての自覚を求められるようになったとか。彼は結局その同調圧力がつらくなり、数年後にその町を去りました。 わたしもこうなると辛くなるのはわかっているので、夏祭りにも町内会にもいっさい参加しません。そのかわり、個人的な友人はきちんと作るようになります。その友人から別の友人を紹介してもらったりして、芋づる式にさまざまな人と付き合うようにしています。これが「線でつきあう」ということです。 このやりかただと、面で付き合う=町内会に入るようなことと違って、同調圧力を求められるようなことはなく、息苦しさを感じないですみます。何か問題が起きたら、線でつきあっている友人に相談することもできます。一緒に飲みに行ったりしていれば、根無し草のように感じることもあまりありません。 これがわたしのやりかたです。同じ手法でどこでも成功するという保証はありませんが、もしご参考になれば幸いです。

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佐々木俊尚さんの過去の回答
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