お酢の選び方について質問です。

酢の尖った酸味が苦手な人が受け入れやすいお酢はどのように見分けたら良いでしょうか。また、普段使いの料理用として稲田さんのおすすめのお酢があれば教えていただけると幸いです。

子供の頃から酢の物をはじめとするすっぱい料理が苦手だったのですが、お酢は身体に良いという情報を何十年も浴び続け、また酢の物を嗜むのは大人っぽくてかっこいいという憧れから、好きになれるよう努力してきました。中年になりようやく克服できたのですが、最近WEBにあった稲田さんのごまだれをレシピ通り作ったところツーン!と酸っぱくてついつい他の調味料を後から相対的に増やしてしまいました。

ちなみにこの時使ったお酢は「富士酢」です。

「やさしいお酢」など砂糖が入ったお酢に走ると、そのレシピを作った料理家さんの意図と違う味になってしまうのが気になってしまうのと、なんだか負けたような気がして…ピュアなお酢の良さを分かるようになりたいです(といいつつ、結局今いちばん使っているのは創味の「だしまろ酢」なのですが)

P.S.

冬に出ると噂される稲田さんの和食の新著、すごく楽しみにしております。きっと酢の物もあるでしょうから、その時までにお酢をおいしく嗜められる舌に鍛えておきたい所存です。

酢の酸っぱさには確かに銘柄ごとの差がありますが、劇的に変わるわけでもなく、酢の選び方では解決しないと思います。富士酢なら充分すぎるほどですし、普段使いの酢も、米酢であれば普通にどこでも売っているものでOKだと思います。穀物酢はそれより酸味が尖って感じられることが多く、ワインビネガーは酸度自体が高いので、まずは米酢です。

銘柄で解決しないのであればどうするかと言うと、ズバリ調合です。基本的な合わせ酢の構成要素は以下の通り。

 

①二杯酢(酢+醤油)

②三杯酢(二杯酢+みりん又は砂糖)

③土佐酢(三杯酢+だし)

 

当然ながら下に行くほど、酸味はまろやかになっていきます。レシピ公開した胡麻酢は、②の三杯酢に胡麻を加えたものとなり、③の土佐酢よりさらにまろやかです。

質問者さんにとってはその胡麻酢ですら酸っぱすぎたわけですが、実はそれはちっともおかしなことではありません。おそらく世間の大半の人はそう感じるであろうからです。

これらの合わせ酢はどれも和食における伝統的な調味法ですが、伝統的な割合のままだとおそらく世間一般には受け入れられません。僕は、世間一般には受け入れられないことは承知で、確信犯的に、伝統的な配合を貫いているということになります。

 

しかしそれらの配合を最適解に寄せることは、実はとても簡単です。砂糖を足すだけで良いのです。砂糖は酸味を面白いように叩いて丸めます。質問者さんが胡麻酢の味を調整した時も、酢以外を全体的に増やすのではなく、ピンポイントで砂糖だけを増やせば良かったわけです。

三杯酢や土佐酢にどんどん砂糖を足して行くと、それはスーパーなどで売っている味に近付いていきます。味の素や濃縮白だしでも足すと、さらに近付きます。カップ入りの味付けもずくの味、と言えばわかりやすいかと思います。

 

僕がなぜ確信犯的に酸っぱいレシピを酸っぱいままで出すかと言うと、売ってるそれらが甘すぎると感じているからに他なりません。実に悔しいことに、カップもずくも惣菜コーナーの南蛮漬けも買えませんし、ホタルイカに勝手についてくる酢味噌も、酢を足すなどして改造するか捨てるかです。ポン酢は、甘味だけでなくダシ感が強すぎると感じます。なのでこれらを全て自家製するしかなくなるわけです。

売っているものが最適解であることは間違いないのでしょうが、僕と同じように感じている周縁の民は確実に存在しているはずなので、そこに対してキチンと酸っぱい自家製レシピを出すし、あわよくば最適界から潜在的周縁の民を1人でも2人でもなんとかそこに招来しようとしているんですね。デビルマン軍団の結成のようなものです。(余計分かりにくい例え)

 

人の好みはまさしく十人十色です。和食のレシピは特にそこが難しい。だから今作っている本でも、酢の物に限らず、もちろん自分にとってベストと思う配合は提示しますが、好みに合わせたそこからの調整の仕方も明確かつ理論的に提示します。

質問者さんが酢に関して予習をされるなら、先ほど書いたように、砂糖で調整です。目安としては「酢の50%重量まで」です。ただし元レシピにみりんが入っている場合はその分の甘さ(みりんの1/3量=砂糖で換算)は引きます。

そこまでやって酸っぱければ、またご相談ください笑

 

2か月

利用規約プライバシーポリシーに同意の上ご利用ください

イナダシュンスケさんの過去の回答
    Loading...