粟田知穂:社会の側の視点から言えば、法律を作るのには時間も手間もかかりますから、その間に社会がまた変化しているという事情があります。中には、法律の抜け道を探し、利益を得ようとする人たちもいるでしょう。法律は完全ではなく、社会の変化に合わせて改変したり、新しく作ったりする必要があるものだということは当然気に留めておく必要があります。
他方で、法律を制定する側、そのような権力を持った人たちの動きにも留意が必要です。人は他人を支配しようとする欲望を持っており、現代では法律がそのための道具として使われる可能性が高いです。例えば、新たに税を取り立てる、国民に新たな義務を課す、国民の権利の犠牲の下に自分たちや自分たちに近い人々の利益を図る、これらの全てあるいは多くは法律という一見正しい手段をもって行われますが、実際は他人を支配しようとする一部の人たちの恣意によって行われることもしばしばあります。まさに悪夢のような状況ですが、既に外国のことや我が国の過去のことを想像された方もいらっしゃるでしょう。
法律を作る人たちに任せておけば間違いはない。その考えこそが誤りです。私たちは目を覚まさなければなりません。