トラックの運ちゃんをしていた父がよく言ってました。あんなうまいもの飲んだことないと。配達に行った米軍基地でコーラを飲ませてもらったんだそうです。「あんなうまいもんを毎日飲み食いしながら戦争するやつらに勝てるわけないわい。こっちは芋ばっかりじゃけえ。」私より上の世代の人たちには、アメリカに対する抜きがたい劣等感みたいなものがあったんだと思うんです。アメリカみたいになりたい。そういうあこがれはバブル時代を超えて、この国にいまも根強く残っている気がします。

あれもそうでしたよね。新自由主義。規制緩和して政府の役割を減らす。そこまではよかったんだけど、雇用を自由化して非正規雇用を増やし、企業がいつでも首切りできるようにした。アメリカと同じように人材の流動化をするつもりだったのかもしれませんが、結果としては同じ仕事をしているのに待遇が悪く不安定な職が増え、社会の分断を招いた。それを代償として企業は世界のトップを切って成長しているかというと、あれれ? 何だったんでしょうね。

何の話でしたっけ。アカデミアの衰退ですか。ご心配なく。日本が衰退しているのはアカデミアだけではありません。経済も諸外国のなかで一人負けしているので、それに歩調を合わせていると言えなくもありません。要は、割ける予算がないんですね。昨今の国家財政(やけくそ)大盤振る舞いを見ると、予算がないのは本当かと言いたくなりますが、まあそういうことにしておきましょう。

では、アカデミアへの予算の使い方は間違っていなかったのか。それは十分に検証してみるべきです。「選択と集中」と称して全体から毎年1〜2%ずつ減らし続け、どこかよさそうなところに注ぐ。ただし時限付きで。3〜5年したら終わり。そういうことを繰り返してきました。どこかのダメな会社の経営戦略みたいですが、とにかく今もそれが続いている。常勤職は大幅に減り、増えるのは任期付きばかり。まさに非正規雇用と同じです。経験を積んだ人材をどんどん切り捨てていく。このやり方が効率的だと考えた人がどこかにいたんでしょうね。でも衰退するのは明らかです。すでに結果も出ています。すぐにでも方向転換が必要だと私は思います。

1年

利用規約プライバシーポリシーに同意の上ご利用ください

橋本 省二さんの過去の回答
    Loading...