「四大文明がウソ」までは『MASTERキートン』以外の専門書も触れているので事実です。
私が覚えている範囲だとこの辺ですね。
先住民から見た世界史 コロンブスの「新大陸発見」
著者 山本 紀夫
https://www.kadokawa.co.jp/product/322302000106/
他方、「約二十の文明があった」の部分については同じ主張をしている方は見た記憶がありません。
基本的には「四大文明は範囲が狭く、ユーラシア大陸しか説明していない。南北アメリカの文明まで考えれば”六大文明”になる」とは前掲書のお話です。
しかしこの場合も趣旨は「四大文明より文明の起源とされる文明は多い」というのが一般的な見解で、20まで起源とされる文明を広げるのは、専門家一人一人の専門領域を考えても考えにくいです。
アメリカ史の人がアメリカ史の不足分を補うように、アフリカ史の人がアフリカの起源文明を、中国史の人が中国の起源文明を補うことはあっても「世界全体」を一人の人間が語るのは考えにくいお話です。
もしあるとすれば「文明の起源」をテーマに複数の地域の専門家が集まって書いた本の中でようやく「みなの意見を集めると約◯◯個の文明が起源といえる」というお話になるでしょう。
『MASTERキートン』は基本的に史実を参照していますが、「文明ドナウ起源説」など明確にフィクションの描写も存在します。「四大文明がウソ」は多くの専門書が同じ主張をするでしょうが、「約二十の文明があった」はほぼフィクションと考えていいでしょう。事実か事実でないか重要なお話であれば、主張とセットでそのお話は何を根拠にそのお話をしているか、いわゆる脚注や参考文献が必要です。
たとえば歴史漫画『アンナ・コムネナ』の巻末には参考文献がありますが、『MASTERキートン』には参考文献がありません。
https://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/annakomnene/
『アンナ・コムネナ』はある程度史実を元にしており、怪しいと思えば参考文献をあたれば確認できます。他方『MASTERキートン』は参考文献がないため、そもそも漫画の内容を事実だと説明する形で書かれていません。
そのため、専門家のもっとも模範的な回答は「漫画に出てるのはわかった。それで、その漫画は”どの資料の話をしているのか”」でしょう。そして資料がないなら(参考文献がないなら)「資料がないので検討に値しない」と返すのが普通ではないでしょうか。