後輩で現役高校生であるといとうあなたへ

 まず、このような機会にレターを送ろうと決心したことに敬意を表します。私の思い違いでなければ、それなりに迷い、勇気を出したのではないかと思うからです。

 そこであなたが私にぶつけてきた質問というか批判ですが、はっきり申します。

 私は未だかつてLGBTQの人たちを差別する、また偏見を持ったことは一度もありません。また、そのような文章を書いたこともなく、編集者ばかりでなく、読者の方からも、そのような指摘を受けたことは一度もありません。

 それなのに、私を「トランスヘイター」と決めつけてかかって来られるのは非常に心外であり、また侮辱です。たとえ後輩で十代のあなたであろうと、私がこれまで積み上げてきたものを突き崩すようなことをされるのは断じて容認することは出来ません。

 書評をごらんになったということですが、それは、私が何かの本について書いた書評ということでしょうか? ネットで検索しましたか。それでしたら、思い当たる本が一冊あります。ですが、その書評について、あなたはまったく読み間違いをしています。その理由を考えてみました。

 一つは、あなたに読解力が足りていないこと。

 二つ目は、あなた自身が今、不安定な年代の真ん中にいることから、特にLGBTQに対して非常に敏感になっていること。

 このどちらかではないかと思いました。

 一つ目は、ただ「勉強なさい」としか言えません。こちらが書いていることの意図をきちんと読み取れるようになってください。

 二つ目ですが、これは、高校生であるあなたにとっては、非常に強いインパクトを与えたのではないか、ということです。LGBTQの問題は常にデリケートで、なかなか踏み込んだ話をする相手を見つけにくいものです。もしかすると、あなた自身が、そのような不安を持っているために、私の書評にくいついたのかも知れませんね。だとしたら、私が書評で扱った本をまずは、よく読んでみて下さい。その本そのものが、誤解を招きやすいことを覚悟の上で上梓されたものだということもつけ加えておきます。

 私はあなたが産まれるずっと前、30年以上も前から、小説にトランスジェンダーの人物を

登場させています。それは主人公の親友であったり、また、仕事仲間であったりしました。私が彼らを身近に思っているのは、私自身にトランスジェンダーの友人がいるからかも知れません。ずっと長い間のつきあいで、共に旅行をしたり、家に遊びに往き来したりという関係です。

 また、若い頃には、いわゆる夜の店で働いているトランスジェンダーと親しくなり、色々な悩み事を聞いたり、「女の目で品物を見てみて」と頼まれて、一緒に買い物に行ったりもしました。私は彼・彼女たちの怜悧さ、デリケートな部分、そしてウィットに富み機転が利くことなど、すべてが好きでした。年齢を重ねるに従って、手術を受けるために他国に渡ったり、うつ病を発症したり、みずから生命を断ったりして(親しい人に自死される気持ちがあなたには分かるでしょうか)、だんだんつきあいはなくなっていきましたが、折に触れ彼・彼女たちを思い出しますし、とても懐かしく、また残念に思っています。

 そういう私が、こともあろうに「トランスヘイター」などというレッテルを貼られるのは、たとえあなたが十代の高校生であり、また後輩だとしても、断じて容認は出来ません。 

6か月

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