質問が漠然としすぎて、どれをオススメしたらいいのかわからないのですが…これを読むであろう他の皆さんのことも考えて説明をすると…まず、日本で公開される中国映画は少ないので、見られるものは全部見ておくべきでしょうね。中国映画を見ていると、中国人と話す時に何かと便利なんです。歴史ものでも、現代劇でも。「オススメ」以前に選り好みできるほど数がないんです。
それと、日本で公開されないタイプの映画を、たまに日本でやってることがあるのですね。
映画祭とか、現代中国映画上映会(東京で活動している)とか。たまに、アマプラでも「なぜこの映画が?」という作品が入ってたりする。
もし、この手の機会があれば、どんな作品でも、時間とお金の許す限り見ておくべきです。
国際的に上映されることを全く前提としない、中国人の中国人による中国人のための中国映画。
これらを見ているだけで、中国の諸事情を理解する上で、解像度が全然違ってきます。
これだけで終わってしまうとつまらないので、比較的最近の、見やすい作品の具体名をあげてみると…
■『最愛の子』
https://www.bitters.co.jp/saiainoko/background.html
中国の児童誘拐に興味がない人でも、中国に関わる人だったら、これは見ておいた方がいいです。現代中国を理解する上でのたくさんの要素がギッシリ詰まってました。劇映画なんだけど、ドキュメンタリーみたいな映画です。
■『オペレーション・メコン』
実話をベースにしているフィクションですけど、アクション映画のようで、こちらも見せ方がドキュメンタリーっぽいというのか。あの地域の実際の状況を色々と織り込んでいるのでしょうね。私はこの地域の事情に詳しい中国人と一緒に見てたんですけど、この映画は非常にリアルだ…と褒めてました。
■『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』
「戦狼外交」の語源になった作品ですけど、本作には「現代中国人の世界観」がギッシリ詰まっているのですね。中国とアフリカの関係、その目線で中国が西洋をどのように見ているのか。
中国が一帯一路で発展途上国を取り込んでいく時には、この映画のような世界観が背景にあるのだな…というのを意識してニュースを見ていると、時事問題を理解する際の解像度が変わってきます。
■『青の稲妻』
映画ドットコムでの評価が低すぎますけどw、私はこの作品を楽しめました。
中国の地方の「気だるさ」とか、若者の日常をよく表現できている…というのかな。日本では、中国のごく一部の若者の成功だけをとりあげて、「中国はスゴイ!」と持ち上げたりするじゃないですか。でも、地方とか田舎の若者は、こういうダラダラした日常を生きているわけで、それを敢えて大真面目に映画にしたのはスゴイと思いますw。
もう20年以上前の作品なので、社会状況も大きく変わっているのですが、今でもたまにニュースを見ていると、この映画で描かれたような中国の若者が今でもいるんだろうな…と、ふと思い出したりします。別に、無敵のヒーローも絶世の美女も出てこないし、愛と感動のサクセスストーリーでもないんだけど、実際の中国でも、こういう鳴かず飛ばずな若者が大半で、そういう若者が、ミャンマー国境へ行って詐欺事件に関わったり、反日デモに参加して暴れたり、白紙運動に参加してたりするんだろうな…とか想像します。
中国で大事件が発生したり、社会を大きく揺るがす事件が起きる時には、どこからともなく若者がぞろぞろと出てくるわけですが、中国共産党が恐れているのは、立派なインテリとか、大金持ちよりも、この映画に描かれているような、地方で金も地位もなく、暇を持て余して、未来への明るい希望もない若者たちじゃないのかな…と思ったりするのです。