白石直人:古代文明崩壊の共通要因としてよく上げられるのは気候の寒冷化だと思います。特に地球規模の寒冷化は複数の地域で近い時期に文明の崩壊を起こしています。例えば 約4000年前:シュメール文明およびエジプト古王国の崩壊 約3000-3500年前:ミケーネ文明およびヒッタイトの崩壊 約1700年前:ローマ帝国及び後漢の崩壊 などが挙げられます。 寒冷化に伴う旱魃や飢饉は、人々を死に追いやり文明崩壊に導きやすくします。このような危機的な状況では戦争や反乱も起こりやすくなります。また、寒冷期には(新天地を求めて)民族の大移動が発生して、それもまた移動した民族の侵入を受ける地域の崩壊へと至らせることが少なくありません。約1700年前の寒冷化では、ヨーロッパへはゲルマン民族大移動が起こり、中国へは五胡十六国の大移動がありました。中東地域も(崩壊はしませんでしたが)ササン朝ペルシャがエフタルの圧迫を受けました。 このように、文明崩壊の直接原因は戦争や反乱であっても、背後の要因としては気候寒冷化を考えることができる場合は多いです。(阅读更多)
トピルツィン/ウンフェルス:「時間が経過した」という共通点があります。これは非常に真面目なお話です。 . 古代史を学ぶ際にしばしば陥りやすい問題として「原因を探す」というものがあると私は考えています。 しかしたとえば人間が70年、80年生きて亡くなるなら、それは老衰とされます。 もちろん医学的には具体的な原因が示されることもあります。 が、基本的には「体が限界であった」「だいたいどの臓器、器官も悪い」とは身内の死で聞いたお話です。 . それゆえ、国家や文明においても老衰という可能性を保持しておくのは大事なことです。 もちろん古代ローマのような長寿国家を見れば「なぜ滅んだのだろう」と考えたくなるのは自然なことです。 他方、長寿でなかった国は数年で滅び、歴史に名を残すことなく忘れられていきます。 しかも、これらの短命な国家の死因など、誰も調べてはくれません。 どちらかと言えば、こちらの方が原因究明は楽なのですが…… . 古代ローマに関しても、多数の有力な説がありますね。 曰く、ゲルマン民族を重用しすぎたとか、気候変動であるとか。 しかし根本的には寿命であり老衰であると考えています。古代ローマ、この場合の西ローマの滅亡の原因は老衰と考えてしまうのが入門レベルならわかりやすいでしょう。 西ローマだけでもだいたい1000年は生きていますし、東ローマも含めれば2000年は生きています。十分に長寿と言えるでしょう。 . 具体的な理由についてはこちらをどうぞ。 新・ローマ帝国衰亡史 (岩波新書) https://amzn.asia/d/aI4dzMc --------------------- もうひとつ重要な視点は、死因について後知恵でいくらでも言えるのに対し、 「延命」の方は原因が比較的少なく、また当事者の行動が明確なことです。 これに比べれば文明の死因は難しいです。 たとえば古代ローマは何度か政治体制を変えていますね。 これはもちろん、そうしなければ問題が大きいからそうしたのです。 -たとえば、体制を変えねば国家が滅びかねない、のような- まず王制から共和制への移行、そして共和制から帝政への移行、 東ローマまで含めるなら東西分裂とコンスタンティノープルへの遷都などもこうした延命措置に含まれるでしょう。 . なお、こうした延命措置については共通点はないと定説の観点からも言えるでしょう。 ですが奇妙なことに、滅亡の理由については共通点があるとされています。 それは人間と同じです。老いると臓器は悪いし手足は悪いし、シワも増えます。 しかしこれは死因ではありません。「滅亡国家の共通点」であるに過ぎないことは注意が必要です。 以上の大前提をもとに、文明の滅亡を考えてみてください。 私にはまだ文明の滅亡は難題ですので、文明の誕生と延命措置の数々を通して、 滅亡の理由を「並べる」にとどめています。 長寿の国家は滅亡に値するだけの時間を過ごしました。どの原因も、致命傷だったことでしょう。(阅读更多)