山形方人(やまがたまさひと):大学生や大学院生が、論文を読めるようになることは基礎的な訓練としてとても重要です。そして、もちろん研究は「無」から始まることは非常にまれではあります。この2点を前提にして、以下のような言葉を参考にしてみてください。 「自分の小さな発見を大事にしよう。論文やあふれる情報からではなく、自然、現象から出発しよう。 (大隅良典)」 「非常に多くの若い科学者がCellやNatureに出た面白い論文を見て、「それをやってみよう」と考えることは、決して、本当の意味で独創的なものにはならない。 最近の傾向で残念なのは、自然のプロセスや現象を観察することではなくて、論文で読んだものや研究室の主催者によって与えられたものをプロジェクトとして、最初の研究アイデアを得ていることだ。 (竹市雅俊)」 「実験室に入ったら先入観や教科書の知識を忘れて、自分の立てた実験計画やこれから予測される結果に固執することな く、自然から学ぼうという謙虚な考え方を持つことが大切であります。(早石修)」 「価値の発見をするためには、若いときに自然科学のみならず、人文社会科学あるいは世の中について広い教養と原理・原則をたたきこんでおくことが必要です。それによって触発されるわけです。結局、若いときにどれくらい本質的なことに興味をもって育ったかということです。家庭環境や友達、知識・教養、国内外の文化など、いろいろなレセプターを前もってつくっておく。そこに、いつの日にか研究結果がピタッとはまる。(野依良治)」 「研究者の心の病を分類すると、美に耽ける者、文献好き、誇大妄想、機械嗜癖、職業不適正、理論構築者がある。(サンチャゴ・ラモン・イ・カハール)」 一番注意しなければならないのは、些細な論文やホットな論文を読んで、小さなアイデアを思いついて、それを研究してしまうことだと思うのです。世の中の9割以上は「些細な論文」ということになります。そして、些細な論文でない1割の論文は、世の中の流行や既に大切になっている問題を追っている「ホットな論文」です。そういうホットな論文にも影響を受けないようにしなければいけません。正しくない結論を主張している論文も数多くあります。 他人のアイデアに影響を受けないようにすればよいと豪語する研究者もいますが、気づかないうちに影響を受けてしまうものです。特に、それぞれの論文に「感動した」「素晴らしい」といったポジティブな感情を持ちやすい人は注意が必要です。 文献好きで、文献集めが趣味のようになってしまう人も、真の意味でプロダクティブになりにくいです。論文の整理が作業になり、細かなところばかりが気になってしまい、大局観を見失うからです。もちろん、総説を書いたりする場合、このような作業は必要なときもあります。 自分の専門とは違う「広い教養と原理・原則」をしっかりと学び、「自然、現象」を論文からではなく 素直に観察、思索することが研究には大切です。このことを優先すれば、自ずと「論文を読み過ぎること」が研究でやり過ぎるとよくないことになると思います。(阅读更多)