津田賢一 (Kenichi Tsuda):植物を陸上植物とした場合でも、コケ植物、シダ植物、種子植物と4-5億年の進化の過程があり防御機構は相当に異なっていると考えられます。現在防御応答の進化は盛んに研究されている分野ですが、まだまだ分かっていないことが多いです。今回は比較的研究が進んでいる種子植物の防御応答が種間でどう違うかというところを説明していきます。 植物の病原体に対する防御機構は大きく分けて病原体を認識する前から存在しているものと病原体を認識後に起こる防御応答に分けられます。認識前に存在している物の例として葉の表面の構造の違いがあります。ある植物種の葉の表面は堅くてかてかで、いかにも病原体が侵入しにくそうな構造をしています。このように物理構造による防御機構が種間で異なります。また、植物は病原体の活性を下げるような物質を作りますが、この作られる物質も種間でかなり異なります。また、金属イオンを高蓄積出来る植物などはこの特性を生かして(高濃度の金属イオンは通常の植物にも病原体にも毒性がある)金属イオンを防御物質として使っている事が示されています。 病原体の認識で起こる防御応答は植物が持つ受容体が重要な役割を持っています。これらの受容体の種類は植物種間はもちろん、同種の中でもかなり異なっている事が分かっています。従って病原体を認識するという点で違いが存在します。 受容体で病原体を認識した後、様々な植物のシグナル伝達経路が動き出しますが、比較的このシグナル伝達経路は種間で保存されている事が知られていますが、シグナル伝達経路同士のやりとりなどは種間で異なったりしていることが知られています。シグナル伝達の後様々な物質が作られ、病原体を攻撃すると考えられていますが、この攻撃に使われる物質も種間でかなり異なります。 病原体の認識から攻撃というコンセプトは種子植物の中で比較的保存されていますが、受容体、細かいシグナル伝達の仕組み、実際に病原体の攻撃に使われる物質は結構違うと言えるかと思います。(阅读更多)