横田有為:圧力を利用した発電用の圧電材料やデバイスの開発は現在進行形で広く行われています。しかし、残念ながら圧電発電において、太陽光発電などに匹敵するような発電効率を実現するには至っていません。一方で、圧電材料の特徴を活かすことで、圧力を利用した発電デバイスは少しずつ我々の生活の中で活用され始めています。 まずは、ご質問されていた「歩くと発電されるデバイス」に関してですが、例えば神戸大学とパナソニックの共同で開発された「圧電振動発電素子駆動スマートシューズ」があります。シューズに圧電材料(PZTという既存材料)を内蔵させ、歩く時の振動によって発電させることで、シューズに内蔵したバッテリーフリーセンサのデータをPCやスマートフォンに転送したり、専⽤アプリによる位置情報とリンクさせたランニング時の運動状態をモニタリングしたりすることを可能としています。 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/1502/12/news011.html この他にも、TOTOが販売しているトイレの便器の操作パネル(「エコリモコン」という名称)には圧力発電素子が利用されています。こちらは既に広く普及しているデバイスですので数多くの方が利用された経験があると思います。これはまさに、ボタンを押す行為を発電に利用しており、ウォシュレットなどのためにボタンを押すことで通信に必要な分を自ら充電しています。 https://jp.toto.com/page/company/csr/csractivity/technology/washlet02/index.htm また、「発電床」と言われる圧力発電デバイスの上を歩くことで発電するものもあります。これは、東京駅において乗降客が歩くことで発電するシステムの実証試験が行われたりしており、この発電された電気を電光掲示板や自動改札機の電力に利用することが期待されています。 このように、現在の圧電材料ではまだ大幅な発電量の改善はまだ十分に実現できていませんが、屋外の広い敷地に設置する必要がある太陽光パネルなどと比べて、圧電素子は小型化が可能で様々な箇所に設置できる点が特徴です。そのため、圧力発電デバイスを用いることで、これまでは外部から電力を供給したり、ボタン電池等で動作させていたデバイスを、電力供給や電池なしで動作することが可能になります。これは、電力供給用の余分な配線の削減や定期的な電池交換に関わる労力を大幅に削減できることに繋がる上、これまで情報が得られていなかった場所との通信を可能とするため、スマート社会実現のために現在大きく注目されている技術の1つです。(阅读更多)