Yuji Miyazaki:ご質問頂きありがとうございます。「テレビCMは商品を発売した事実、商品の内容、その他商品に関する情報」を伝えればよい、「告知」をしておけばよいのでは?という疑問は、話の着眼点としては、とても正しいと思います。実際に(1)「商品の内容」の違いが、購買者の比較対象となる商品群と比べて明らかである(2)「商品の内容」の違いが、購買を決定するのに意味があることである(3)「商品の内容」の違いをテレビCMによって表現することができる、以上の三つの条件を満たすのであれば確かに「告知」だけすればよいでしょう。 そうであれば逆に、これらの条件を満たしていないからこそ、単純な「告知」以外の技法によってCMが作られていると考えることができます。例に挙げて頂いているビールで考えてみましょう。 (1)まず商品の内容の違いですが、よほど好きな方というか専門家は別にして、多くの場合、ビールの味や香りの違い、アルコール度数の違いを分かった上で愛飲しているかどうかは微妙なところでしょう。目の前でグラスをいくつか並べて飲み比べれば「違うな」ということは分かると思いますが、ブラインド形式で銘柄を当てたり、ましてや「飲み比べ」ではないのに違いを言い当てて銘柄を当てることができるという人は珍しいと思います。要するに、どのメーカーも醸造技術は一定以上で、商品ごとの違いというのはそこまで明らかには無いということになります。 (2)次に仮に味の違い、アルコール度数の違いといった内容の違いが認められたとしても、それが一般的に購買の決定に際して重要であるかどうかは怪しいことです。要するに「告知」をして、それで買って貰えるならそれでよいわけですが、今やモノの「機能(味や香り、のどごし、酔えること)」によってまさにその商品の購入を決めているかどうかは、そこまで自明視できるものではありません。 (3)最後に、(1)(2)の二つの条件を満たす場合であっても、それをテレビCMで表現できるでしょうか。ビールの味わい、香りの違いを言葉で表現して、かつそれが視聴者に伝わる、というのができるビールは稀でしょう。お酒というのは、例えばビールなら他のビールとの味の違い、ウイスキーなら他のウイスキーとの味の違い、というのが特に表現しづらい商品カテゴリーの一つでもあります。 このような事情で、「告知」以外の訴求方法が必要になってくるわけです。一言でまとめると「告知をしてそれで買ってくれるならそうしている。そうじゃないから別の技法の必要になる、その一つがイメージ、フィーリング(ご質問者のいわれる「共感」)、デザインの訴求だ」ということになります。(阅读更多)