福島真人:科学研究にセレンディピティという言葉があり、幸運の働きにより大発見をする、の意味ですが、この言葉は人生行路の選択にも意外と使えるという気がします。人が自分のコースを決める方式はまさに千差万別で、これが定番というのはありません。選択肢が非常に限られていた伝統社会や、あるいは階級構造が厳しいところでは親の職業を子が継ぐのが前提となっている場合も多く、人生の輪郭が分かりやすい。他方我々のところは表面上選択肢が多数あるために、逆に先が見えなかったり、あるいは長期間モラトリアム(猶予)状態を維持する場合もあります。それゆえ、一般的に有効な助言というのは非常に難しいですが、やりたいことがはっきりしているならこういう質問はでないだろうし、特にこれがやりたいということがないのなら、今の流れをとことん突き詰めて、どこに至るか試してみるというのが一番実行可能な気がします。自分、というのは基本的に一種の幻想で、周りや物事とのかかわりで、事後的にああこういうことね、と分かるものですから。(Read more)