ずいぶん以前のことですが、ソフトウェアの開発会社で面接官をしていた経験があります。たくさんの方を面接させていただきました。そのときのあくまで個人的な感触としてわかったのは、面接を通じてわかることもあるが、わからないこともあるという当然のことでした。しかしながら、面接はペーパー試験や書類選考とは違う側面から対象となる方を見ることができるのは確かです。
あなたが質問で書いてくださった「面接をくぐり抜けないと働けない」というのは確かにそうですが「瞬発的に打ち返す必要がある」というのは必ずしもそうではないと思います。業種にもよりますし、会社にもよりますけれど。
面接官は多様な観点を持って面接をおこない、「あなた」が(いろんな意味で)どのような方であるかを知ろうとします。瞬発性も確かにその一つですが、決してそれだけではありません。
「コミュニケーションをとれる相手かどうか」はとても大切なポイントだと思います。あなたの比喩をお借りするならば、面接官が投げたボールをまずはよく見て、受け止めてくれるかどうか。そして、それを適切に返してくれるかどうか。あなたは「打ち返す」と表現していましたが、バットで打ち返すことよりは、キャッチボールをする比喩の方が適切だと思います。
その意味では、あなたが書いてくださった「ボールをじっくりと観察して、よく考える」というのは何も悪いことはないし、むしろ良いことばかりです。大事なのは、そのように時間を掛けて返すタイプであるということそのものを、相手に伝えることができるか、ですね。「私はこういう性格だ」と自分だけで思っているのではなく、それが相手に伝わっているか。
面接官をしていたときに、コミュニケーションが取れず困ったことがありました。面接した方が自分の世界に入り込んでしまって、こちらの質問が聞こえているのかどうかもわからず、何を考えているかもこちらに伝わらず、という無為な時間になってしまった経験です。こういうケースでは、面接を通じて何とも判断ができないため、あなたのいう「アウト」になる場合が多いですね。
「コミュニケーションがとれる」ならば、能力はどうか、社風に合うかどうかといった判断材料が増えるため、「アウト」になりにくいと思います。
私自身が面接官の立場であった話ばかりになってしまったので、面接を受ける立場だった時代のことも少し書きます。私自身もそれほど瞬発性は高くありませんが、人の話を聞くことはよくできるほうだと思っています。
ですから、面接官からの問いをよく聞き、その質問の意図を把握しようと試み、もしも意図がわからなければ適切に聞き返すし、内容がすぐに答えられないようならば、その旨を伝える。そのような行動で面接に臨んできました。要するに先ほど書いた「コミュニケーションをきちんととる」ことを大切にしてきたと思います。
その結果、受けて落ちたこともありますし、受かったこともあります。どちらも会社側は「適切な判断」をしたと思っています(いまにして思えば)。