川原繁人:直接の回答になっているかわかりませんが、私も学生のころからテストが嫌いでした。学問というのはじっくり考えて答えをだすもののはずなのに、限られた時間で自分の能力を試されることに強い抵抗を感じたのです。持ち帰って、じっくり考えて、自分の答えを何度も推敲できるレポートでしたら、なんの問題もなかったのですが。
同じような理由で大学院生の時は、学会の発表でとても緊張しました。15分か20分の限られた時間で、聴衆を前にして自分自身の考えをプレゼンしなければいけないわけですから。しかも多くの場合英語。ですから、学会前にはたくさん練習する人でした。事前に資料は作りますが、その資料を見ないでも発表できるように、ほぼ覚えていました。シャワーを浴びながらそらで発表してみる、なんていう練習もしました。
しかし、先生になって、このやり方が好きでなくなりました。発表のやり方を覚えてしまうと、聴衆とのやりとりができなくなってしまうのです。聞いてくれる人の顔をみながら、自分に言っていることがわかりにくそうだったら、別の説明を加える。逆に退屈そうだったら説明を短くする。そんなやりとりの方が大事だと思えるようになったのです。
今では準備は最低限しかしません。あまりぴっしり準備してしまうと、その場での対応するフレキシビリティがなくなってしまうからです。
面接や発表の準備や練習をすることは良い経験になるでしょう。しかし、相手とのその場のやり取りを楽しめるようになると、もう少し広い景色が見えてくるかもしれません。