積惟美:株主にとって基本は配当金が重要です。お金を直接もらえば、そのお金を使って株主優待のサービスを受けることもできる一方で、株主優待はそれ以外の用途に使うことができません。そのため、受け取った配当金の用途が再投資、もしくは出資者に分配することがメインの機関投資家は株主優待を求めません。むしろ、株主優待に使うお金があるのならその分配当金を増やしてくれと思っているでしょう。
個人投資家も基本的な配当金の方が重要ですが、その企業のファンであったり、お得感を感じたり、贈答品を感謝の証と捉える(お歳暮のような感覚)ような個人投資家は株主優待を喜ぶ傾向があると言えます。
企業側としては、原価の問題もありますが、たとえば株主の約99%が個人投資家であると言われているカゴメなどは、そうした個人投資家を惹き付けるために株主優待制度を積極的に活用しています。なぜそうしたことをするのかというと、株主優待によってその企業のファンを作り、そうしたファンは短期的には株を売らないため、安定株主になってくれるからだと言われています。また、一般的には機関投資家に比べて個人投資家はいわゆる「もの言わぬ株主」という側面が強いことから、経営に文句を言われにくくなるという効果も考えられます。
株主優待制度の是非はいろいろとあるかもしれませんが、日本は他の国々と比較しても株主優待の種類や内容が豊富であり、かなり特徴的な制度になっていると思います。とても興味深い事例ですので、さらに調べて見てください。