小田部正明 (Masaaki Kotabe):寄付金が所得から控除されるのは日本もアメリカも同じですから、同じような節税効果を持っています。ですからそれだけでは日米の寄付に対する態度の違いは説明できません。キリスト教徒は「与えるという概念」(The
concept of
giving)を聖書から学んでいるからお金を寄付をすることが多いということを良く聞きます。確かにその点で日本と多少違いを感じますが、アメリカでも多くの場合多少の寄付(例えば赤十字などへの慈善団体への寄付金)であって多額であることは稀です。信託基金を築いても日本もアメリカも収益には似たような課税がありますので、それでも説明できません。相続税は日本の方がアメリカより高いので、本当だったら日本人の方が寄付に回す額が多いはずですが、それでもなさそうです。そう考えると、
次に考えられるのは、世界の億万長者数を見てもわかるように、アメリカの方が高額所得者つまり富裕層が日本よりはるかに多いからではないでしょうか。最後になりますが、マズローの欲求階層説によると、私たちの欲求には5段階あり、基本的なものから高度なレベルで、生理的欲求、安全の欲求、愛と所属の欲求、尊敬の欲求、自己実現の欲求と言われてきます。つまり、所得・資産が多ければ多いほど、尊敬の欲求、自己実現の欲求が高くなります。一言でいえば、財団などを作って世の中に自分の名前を残したいというような欲求でしょう。例えば、マイクロソフトの創始者、ビル・ゲーツと彼の妻、メリンダ・ゲーツが世界から貧困、病気、不平等を無くすために創設されたゲーツ財団が挙げられます。日本でも同じように笹川平和財団、トヨタ財団などがあります。