田口善弘@中央大学:ちょっと厳しいことをいうと「AI研究の第一人者になる」という目標があまりよろしくないように思います。甘利俊一という先生がいます。
文化勲章を受章した私が、83歳になっても研究を楽しめる理由(甘利 俊一) | ブルーバックス | 講談社(1/2) (gendai.media)
極端なことをいうと今のAI研究の源流となったニューラルネットワークの理論的枠組みである情報幾何を作った人です(結構盛っている部分もあります)。さてWikipediaを見てみましょう。
甘利俊一 - Wikipedia
「統計学者達からは数学色が強いために敬遠され、数学者達からは議論が厳密ではない点を批判され、中々認められなかった」なんて書いてあります。甘利先生だけではありません。現在の深層学習ブームの立役者である
ジェフリー・ヒントン - Wikipedia
さん。これは僕はリアルタイムで見ていたのでよくわかるのですが、いわゆる第2次AIブームが廃れてから深層学習が脚光を浴びるまでの間、ニューラルネットワークは「終わった学問」だとおもわれていました。ヒントンさんがあきらめずニューラルネットワークの研究を淡々と続けていたのを見て若い人たちは「あー、かわいそうに。時代についていけない老人なんだなー」と思ったはずです。
何が言いたいかというとその分野で第一人者の人、というのは大体において誰も目もくれないようなことをしこしこやっていて後でそれが実って脚光を浴びるような人が多いってことです。大体、今高校生のあなたが研究者のプロとして研究の現場に立てる頃には10年はかかってしまうでしょう。その間にAIでおもしろい基本的なことはみなやられてしまって、落穂ひろいみたいなことしか残ってないかもしれません。
若い人がその時にはやっている科学にあこがれをいだき、その分野を研究してみたいと思うのは当然のことです。ただ、「第一人者になる」ことの方にもし重きがあるなら、いまはまだ高校生のあなたが、今流行っている分野に飛び込むのは無謀かもしれない、ということをよく考えてください。冒頭の甘利先生の記事を読んでもわかるように彼は決して「第一人者になりたい」と思って研究していたわけじゃないし、研究ってそういう動機でするものではないと思います。役にたたないアドバイスでごめんなさい。