彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:『島耕作』シリーズを私は読んだことがないけれども、ILC (国際リニアコライダー) の建設地の有力候補として岩手県と宮城県にまたがる北上山地があるのは事実だよ!
ILCを建設するためには、長さが20kmかそれ以上の長さとなるまっすぐな、しかも途中で微妙に角度を付けて折れ曲がっているトンネルを掘らないといけないよ。それだけの延長になれば、大半がトンネル掘削の難しい大深度地下になるよ
(これは、地上からのノイズを避ける意味では好都合でもあるよ)
。トンネルを掘り、その後の加速器の大敵となる振動を抑えるならば、なるべく周りの岩盤が安定していることが望ましいよ。北上山地は頑丈な花崗岩が多く、地震だらけの日本列島にしては珍しく地震の少ない場所だよ。高度なトンネル掘削技術と、その先の加速器建設や運用のノウハウの双方を持っている国はそう多くないよ。
北上山地は、そのような背景事情の中で選ばれた、現実の有力候補だよ!2013年に視察を行ったリニアコライダー・コラボレーションのLyn
Evans氏は「北上山地は世界で唯一の候補地だ」と明言したくらいだよ。当初はヨーロッパに、その後は日本と同時期にアメリカも候補地に名乗りを上げたけど、複数の候補を並行して検討するよりは、早い段階で1つに絞った方がいい、と言う考えがあったのも、この明言の背景にあるよ。
ただ、現実には高額な建設費用が最大の問題になっているよ。2019年には日本学術会議が誘致を支持せず、2022年には文部科学省が次期ロードマップにILCを含みつつもいったん棚上げにすることを表明したよ。国際的支援が少ない、というのが背景にあって、実際2007年の計画だと、67.5億ドルが建設費用となり、トンネル掘削や電気代といった固定費18億ドルが誘致国で発生すると見積もられているよ。日本がゴーサインを出さないことから、2017年には出力を犠牲にしてトンネルの総延長を30kmから20kmに削減する案が出されたけど、それでも50億ドルはかかると見積もられていることから、誘致国の負担が重すぎるなら難色を示すのも無理はないかなって感じだね。
私はサイエンスライターなので、ILCをさっさと誘致して素粒子物理学と宇宙の謎を解明してほしい!ってのが正直だよ。ただ、私は費用や政治面はさっぱりなので、ロードマップに含めつつも棚上げすると言うことは、誘致したい本音と費用面が合致しない、というジレンマがあるんだろうねぇ、という感想を持つよ。とはいえ、ILCをどこに設置するにしても、研究者や技術者が大量にそこに集うことになるから、日常生活をするためのインフラとして街1つ作ることが必要になるはずだよ。科学に関心も興味もない人にとっても、こういった誘致による潜在的な経済効果と言うのは他人事ではないはずなんだけどね。まぁそういった素人考えのプラスの効果があってもなお難色があるということは、やはりILCが高額すぎるんだろうねぇ…。