蒔田純:一人の政治家の暴走を防ぐための措置として真っ先に挙げられるのは権力分立でしょう。国家の権力を立法・行政・司法に分け、相互に牽制させ合うことによって権力の集中と暴走を防いでいます。しかし、(特に立法と行政の)権力分立の度合いは執政制度の別によって異なり、立法と行政が明確に分離されている大統領制(大統領と議会の議員がそれぞれ別の選挙で選任される、大統領の地位の存続は議会の信任に基づかない、法案提出権は議会の専権事項 など)ではその度合いが高いのに対し、立法と行政が融合している議院内閣制(内閣・内閣総理大臣は議会から選任される、内閣の存続は議会の信任に依存する、法案提出権は議会のほか内閣も持つ など)ではその度合いは低くなると言えます。この意味で、大統領制は権力を分立させて権力の濫用や暴走を防ぐことに重点を置いた制度、議院内閣制は権力を融合させてスピーティーに政策を実行していくことに重点を置いた制度、であると言えます。
もっとも、大統領制の中にも様々なバリエーションがあり、例えば大統領が法案提出権を持つ国や大統領の多選制限がない国もありますので、一概に大統領制の方が権力の暴走を防ぎやすいとは言えません。
議院内閣制でも、例えば日本では内閣からは独立した「与党」という権力体が存在し、それが内閣を時に牽制することによってチェックアンドバランスが働いている、と見ることも可能です。