渡辺浩弐:あくまでSFとして思考のタガを外してみます。ネットワーク上での遺伝子マッチング〜人工授精〜人工子宮での育成、といったプロセスで子どもを大量生産するという選択肢は技術的には可能であり、少子化問題の究極の解決策は見えているわけです(個人的には、少子化はそういう未来への準備段階ではないかとすら考えています)。ただ実現のためには、倫理問題のハードルを越えることだけでなく、準備が必要なことがいくつかあります。
段階としては、まず子育ての公共化を進めることが必須です。核家族化や個人主義が進み、家族の愛情を盲目的に信じて子どもをそこに預けることには既にかなりの無理が生じています(被害者は子どもたちです)。子どもを家庭などという幻想に託すのはもうやめにして、社会できちんと育てられるシステムを、先進国は持っていかなくてはならないと考えています。そこまでが実現したら、究極の解決策に至る前に、子どもはまた増えていくのではと思います。