田口善弘@中央大学:量子力学ではk空間というのは運動量の空間だ、とされています。つまり、電子の速度を表現する空間です。k空間である場所に電子が居る、ということは、実空間ではある一定の速度で運動している、ということを示しています。
それではその電子は「どこに」いるのでしょうか?残念ながら量子力学には不確定性原理というものがあり、速度(運動量)と位置の測定を同時に行うことはできないことになっています。もっと詳しく言うと速度の不確かさ(あるいは測定誤差)と位置の不確かさ(あるいは測定誤差)を掛けたもの(積)はある値以下になれないことになっています。
さて、k空間である場所にいる電子の速度は完全に決まっているのでした。すると位置はどうなるでしょう?速度が完全に決まっているということは速度の不確かさ(あるいは測定誤差)がゼロということなので、速度の不確かさ(あるいは測定誤差)と位置の不確かさ(あるいは測定誤差)を掛けたもの(積)がゼロにならないためには、位置の不確かさ(あるいは測定誤差)は少なくとも∞でなくてはなりません。位置の不確かさ(あるいは測定誤差)が∞、ということは「電子がどこにいるのか全く決まらない」ということを意味しています。従って、「実空間ではどうなりますか?」ということについては「速度が一定の状態で運動している以上のことは全くわからず、電子がどこにいるかは全く不定である」ということになります。