山中 大学 (Manabu D. Yamanaka):雪結晶の発生・成長は基本的には温度と湿度だけに支配されます.雪と同じ六角形(六方晶系)になりやすい性質をもつ無臭の鉱物(雲母など)を核とすることもありますが,それ以外に取り込んだ物質の匂いがすることは考えにくいです.しかし,ある方向からの風向で雪が降りやすい所では,降る前に吹く海風で塩の匂い,山風で森の匂い,などがする可能性はあり,一方,雪が降り出した後の低温では人間の嗅覚が感じにくくなるため,降る前の風に伴うもののみならず普段ある様々の「匂いがしなくなる」可能性はあります.なお冬季日本海側は夏の大雨と同じ対流雲(積乱雲,入道雲)ですが,後述の雷放電や落雷に伴う匂いも,低温で嗅覚が落ちると夏のようには感じないと思われます. 雨の場合は,前述の海水起源の塩を始めとして様々な飛沫(エアロゾル)が核になり得ますからその匂い,夏などの対流雲の雷では光化学スモッグの原因となるオキシダント(オゾン)の匂い,雨が降っている間や降った後の水たまり,排水溝などに流れ込んだ土や植物や様々な汚物の匂い,それらや路面から蒸発した物質の匂い,などがあります. 以上のように特定の気象現象ごとにそれが起きる前に決まった匂いがするというより,雪や雨が近くのどこかで降っている間や降った後にそれに付随して起こる大気以外も含めた様々の原因の匂いが,条件によってはその場所で降り出す前に嗅覚で感じる(あるいは感じなくなる)というものだと思います.(Read more)