橋本 省二:昨年(2022年)10月に、観測史上もっとも明るいガンマ線バーストが測定されて話題になりました。普段はポツポツとしかイベントのないガンマ線の観測衛星が一瞬のうちに飽和して、何個のガンマ線が入ってきたのかすらわからない状態だったといいます。なぜそんなに明るかったというと、発生源が近かったこと。たったの(!)24億光年だったそうです。巨大な星が重力崩壊を起こしてブラックホールになる瞬間に、ある方向にビーム状に高エネルギーの光(つまりガンマ線)を放つ。太陽1個分のエネルギーが数秒のうちに放出されるんだそうです。何十億光年も向こうなのに、今回はたまたまビームがこっちを向いていたんですね。ガンマ線が地球にまでいっぱい届いた。
そんなのがごく近くで起こったらどうしよう。心配はごもっともです。どうすればいいかを考える前に、何が起こるかを想像してみましょう。ガンマ線バーストの発生源が銀河系の中だったとしましょう。銀河系の大きさは10万光年ですから、今回のより数万倍近いことになります。明るさは距離の2乗に逆比例しますから、数億倍ということになりますか。銀河系のなかでも近い方だったとしたら、あるいはビームが直接こちらを向いていたら...。だんだん怖くなってきました。地球ごと消し飛んでしまうかもしれません。そうでなくても大量のガンマ線はオゾン層を破壊してしまうそうです。そうなったら太陽からの紫外線が遮られることなく地表に降りそそぐ。生き物は全滅です。過去の生物の大量絶滅はガンマ線バーストのせいだったという説もあるくらいだそうです。
そんなことにならないように準備しておかなくては。そう国会やら国連に訴えても無駄です。できることは何もありませんから。まさか地球全体に傘をかぶせるわけにもいかないですよね。いつも思いますが、この地球に私たちが生きているのは奇跡です。次の大地震や大噴火はいつなのかわかりませんが確実にくるでしょう。巨大隕石が落ちてくる確率だって無視できません。それどころか、太陽の活動にもいつか終わりがきます。人類の文明が未来永劫つづくことはないのです。今を大切に生きることにしましょう。