綾崎隼:日本文学というカテゴリーが、一体、どの辺りの範囲を指しているのか分かりませんが。
日本人が書いた作品という意味でしたら、海外と比べ、死の美学を描いた作品がとりわけ多いということはないと思います。武士道的な精神で、死に美しさを求める作品が目に付くということも、歴史小説、時代小説を除けば、特に多いということはない気がします。
登場人物を死なせて感動させる話が多いような気がするという意味でしたら、それは、二つ理由があると思っていて。
一つは、単純に「泣ける」みたいな煽りで販売出来るので、売りやすい、売れやすいということ。
もう一つは、誰でも、歳を取れば取るほど、死別を数多く経験していくからということです。その度に、本当に大きな喪失を味わうことになるので、タイミング次第で、それを物語として描きたいという感情に支配されるからなのかもしれません。創作者の性で、吐き出すことで、感情を消化したくなるのだと思います。