小川仁志:「頑張れ」、「頑張ろう」、「頑張らなきゃ」……。人生の中で何度こんな言葉を耳にしてきたことでしょうか。これらの言葉の通り、人生はあたかも頑張るためにあり、また頑張らなければいけないかのように思われているきらいがあります。でも、本当にそうなのでしょうか? そもそも「頑張る」とは何か? 一般には、忍耐して努力することをいいます。辛くても、諦めることなく前に進むということです。言い換えると、何がなんでも今やっていることを続けるということです。勉強、習い事、仕事、そして人間関係さえも。人間の営みは、基本的に続けることが正しくて、やめることが間違っているかのように思われています。なぜなら、そうでないと物事は成し遂げることができないからでしょう。どんなことでも、一度は壁にぶち当たります。そのたびやめていては、何も成し遂げられません。それは個人にとって損失なだけでなく、社会全体にとっても損失です。だから人生は頑張らないといけないかのようにいわれてきたのだと思います。たしかに、社会にとってはその通りでしょう。勉強も仕事も、辛いからといって途中で投げ出されては困ります。でも、個々人にとってはどうでしょうか。辛いのに強制されるのは地獄です。そのせいでダメになってしまう人もいます。「頑張る」という言葉のおかげで頑張れる人はいいです。中にはそれによって自分を鼓舞し、困難を乗り越えて物事を成し遂げる人もいますから。でも、その言葉のせいで潰れてしまう人もいるのです。そういう人たちにとっては、「頑張る」という言葉は百害あって一利なしです。社会や全体のために自分を犠牲にする必要はありません。したがって、人生は頑張らないといけないというのは、あくまで社会を基準にした話であって、個々人にとっては必ずしも妥当するわけではないのです。そんな全体主義のようなスローガンに悩まされることなく、自分のペースで生きればいいと思います。人は社会のために存在するわけではありませんから。頑張らなくても生きていく道はたくさんあります。そんなことをいうと、みんな頑張らなくなって、社会が崩壊するという極論を唱える人がいます。それはまさに極論です。人間には誇りがありますから、頑張れるのに頑張らないということはありません。ということで、潰れそうになっている人にはぜひこういってあげてください。「頑張らなくていいんだよ」と。誰でも心身ともに疲れてしまって、頑張れなくなる時期はあるものです。今でさえ頑張り続けている私にも、そういう時期はありました。人生は頑張らなければならないのではなくて、頑張れる時に頑張ればいいのです。それが答えです。