福島真人:現在の国家体制は国民国家、つまりnation(国民)をベースにした国家ですから、nationalismを危険と決めつけてしまうと、それは成り立ちません。国家だけがあってnationがないとすると、支配機構はあるが、その下にはバラバラの民族(ethnic
groups)があるという状態で、これ自身がまさに多くの現在の国家の現状、つまり国民統合がうまく機能していない状態ということになります。むしろ議論が逆で、nationが機能していないのに支配装置としての国家だけがあることが、ある意味混乱や対立のもとで、それゆえ新興独立国家はnation
buildingを急ぐわけで、これがnationalismです。アンダーソンという学者はこのnationalismの起源がヨーロッパではなく、むしろラテンアメリカのような国で生まれ、それが世界に伝播したと主張しましたが、確かにそれは人工的です。しかしそれがないと国民国家そのものは成立しないというめんどくさい存在です。