津田賢一 (Kenichi Tsuda):大きな視点で見ると、微生物は様々な環境に生育し動物や植物と共生するので間接的には微生物はありとあらゆる環境に影響を与えうると言えるかと思います。
日本に関連する話だと水田からでる温室効果ガスがあります。水田は水を張ることによって有害物質を洗い流したり雑草が生えることを防ぐなどの利点があり用いられていますが、この水を張った環境は微生物が温室効果ガスであるメタンを作り出す環境にもなります。またある微生物は温室効果ガスである一酸化二窒素を発生し、その多くが農地から発生することが分かっています。農業のシステム改変、土壌の改変、土壌微生物の利用や改変によってこれらの温室効果ガスを減らそうという研究が進められています(内閣府ムーンショットプロジェクト)。
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/visit/09/minamisawa.html
また、農業で用いられる肥料は環境への悪影響が指摘されていて、微生物が植物に栄養を供給する能力に着目した研究も盛んに行われています。微生物の力によって農業で使う肥料を軽減しようというものです(微生物肥料)。
その他にも微生物を利用して環境を改善しようという研究は古くからあり、微生物による環境分解性プラスチックなどはその一つかも知れません。但し、科学的根拠がないEM菌と呼ばれる有用微生物群を用いる動きには注意が必要であるかと思います。