小川仁志:経営者というのは、文字通り経営する人、つまり組織をマネジメントする人ということです。とりわけ営利企業においては、利潤追求を主たる目的としてマネジメントを行う人ということになるでしょう。そして従業員を抱えている経営者は、その従業員をうまくマネジメントしていかなければなりません。そうでないと目的を達することができないからです。 人をマネジメントするという部分だけに着目すると、これはリーダーシップの話になってくると思います。人を動かし、育てていくということです。ただ、リーダーシップのあり方は一つではありません。少なくとも私は四種類に分類できると考えています。その各々のタイプによって、従業員の動かし方、育て方も変わってくるのです。ミスに対する対応もその一つです。 そこでまずは私の考える四つのリーダーシップのタイプをご紹介します。そのうえで、ミスへの対応はどうあるべきなのか考えてみたいと思います。タイプ１ は、イタリアの政治思想家マキアヴェッリの『君主論』に典型的に表れているグイグイ引っ張るリーダーシップです。これだとミスは厳しく非難し、指導することになるでしょう。 タイプ２は、古代ローマの哲学者セネカの『怒りについて』が説く受け止めるリーダーシップです。この場合は、本人にミスをやさしく伝えることになると思われます。タイプ３は、中国の思想家孟子が説いた実利的リーダーシップです。この場合は理にかなった対応をとるので、まさに実務的にさっさとミスを修正していくことになるでしょう。 タイプ４はブッダのカリスマ的リーダーシップです。ブッダは、弟子たちに強制するのではなく、自ら従いたくなるような姿を背中で見せていました。だからこそあれだけの大教団を形成することができたのです。このタイプのリーダーシップによると、リーダーは従業員のミスも自らのミスとして引き受けるのではないでしょうか。その結果、ミスをした従業員は、自分を恥じ、進んで修正するようになるのです。 さて、この分類からすると、相談者の社長さんはタイプ１か２であるように思います。嫌味で高圧的ならタイプ１、本当に教育的配慮からあえて見守っていたのならタイプ２でしょうか。それに対して、相談者が求めているのはタイプ３であるように見受けられます。タイプ４はかなり理想的ですが、世の中にはまれにこういう素敵なリーダーがいるものです。 ということで、どれが正解というわけではないのです。今の社長さんも間違いというのではなく、そういうタイプのリーダーだというだけのことです。世の中には色んなリーダーがいます。大事なのは、自分はどんなリーダーについていきたいかです。他人は変えられませんから、選択肢としては、この人はこんなタイプのリーダーなんだと割り切ってついていくか、どうしても耐えられないなら、いいリーダーを求めて職を変わるしかないと思います。あと、ご自身がいずれリーダーになる時も、ぜひ今日ご紹介した四つのタイプを意識していただきたいと思います。人は年を重ねていく限りなんらかの意味でリーダーになっていきますから。