小川仁志:思考の整理の仕方ですね。たしかに抽象的なことを考える場合、どこから始めればいいのか、またどのように進めて行けばいいのかわかりにくいですよね。特に哲学では「〇〇とは何か?」というテーマについて考えることが多いので、こういう壁にぶち当たります。私はまず、そのテーマについて、日頃自分はどう捉えているか考えます。自分なりの定義みたいなものです。他者と対話する場合は、みんながどう考えているのか共有します。そのうえで、その定義を疑っていきます。本当にそうなのか吟味していくのです。その方法として、似たような言葉とどこが違うのか比較してみたり、具体例に置き換えてみたり、色々視点を変えて捉えてみたり、思考実験をして極端な条件設定の下でそのテーマの本質を浮かび上がらせたりします。そして最後には自分なりにまとめ直します。これは一人で考える時も、他者と対話を通じて集合知を生み出す時も同じです。結局、思考とは概念の分析であり、それは文字通りバラバラに要素を分けて、頭の棚の中に整理していく営みにほかなりません。そんな視覚的イメージを持ってやっていただいてもいいかもしれませんね。じゃあ、今回のお題である「哲学とは何か?」という問いにどう答えるか。一言で答えるなら、自分の頭の中の枠を超えて考えることだと思います。先ほど思考の整理を、常識にとらわれることなく行うということです。例えば、視点を変える際にも、とんでもない視点で捉えたりするのです。そうすると、普通に考える、思考するというのとは違って、深くて違った物の捉え方ができるに違いありません。それが哲学だと思うのです。