粟田知穂:文化の違いとでも言いましょうか。そもそも、数字のマジックもあります。平均値は、外れ値に引っ張られる傾向があります。年収500万円の人が9人と、年収1億円の人が1人いた場合、10人の平均年収は1450万円と9人の年収の3倍近くになってしまいます。一部の弁護士が極めて高い年収を稼ぐのは、「企業がそのように高い弁護士に頼むことにより経営責任を分散しようとする」力が働くからであり、高い年収の弁護士の全てがそれに見合う仕事をしているとは限りません。
他方、アメリカの方がアイディアや思考的・分析的な業務に対し正当な報酬を支払おうとする傾向が見られる、ということもいえます。そもそも代替可能な業務を行う労働者クラスと経営判断や高度な専門的分析を行う幹部クラスとは教育や雇用の段階から区分がされており、多くの場合自分のライフスタイルに合わせてそれを選択する形がとられています。そうすると、後者について責任も伴う代わりに高い報酬を払ってもよいというインセンティブが働くわけです。日本は、その区分があいまいであり、どの立場の者でも「一緒に汗を流してなんぼ」という思考になりがちです。弁護士についても、その業務の専門性や複雑性、責任等に見合う評価が十分されていない、といえるかもしれません。