橋本 省二:25歳でフェルミ統計の理論、33歳でベータ崩壊(つまり弱い相互作用)の理論、つまりニュートリノの存在を予言。その後、中性子の発見の報を聞いて実験への転向を決意。中性子を原子核にぶつける実験で数々の原子核壊変と同位体を発見。特に低速中性子が原子核を壊しやすいことを発見して37歳でノーベル賞。この発見が数年後には原子爆弾につながる。41歳で世界初の原子炉を実現。イタリア人といえば格好つけでいい加減。そんなステレオタイプがありますが、私にとってはフェルミを生んだ国というだけで彼らに対する尊敬の念が薄れることはありません。
フェルミの時代以降、物理学は広さと深さの両面で急速な発展を遂げました。理論と実験の両方をできる物理学者は現在もいますが、両方で歴史に残る業績をあげるというのはちょっと想像もできません。どちらか一方、ごく一部の専門でも最先端に追いつくのも私みたいに普通の人にとっては並大抵のことではありませんからね。ではフェルミのような天才ではどうか。
どうなんでしょうね。一つにはやはり当時は理論と実験の距離が近かった、直接同じ問題を扱っていたという面はあるんだと思います。実験技術も素朴なもので、手作りで実験装置を組み上げることができた。実験とは大変なもので、実験装置のありとあらゆる細かい点まで理解しておかないと間違った結果を出しかねない。一から自分で(たぶん数人の仲間たちと)組み上げることができたというのは見逃せないポイントです。理論のほうも同様で、素朴なアイデアがすぐに理論の定式化に結びついて、計算もたぶん簡単にできるものだった。だから短い時間で成果があがる。今となっては、すぐにできそうなことはやりつくされて残っていない。などなど。
だから新しい革新的なアイデアが重要なんだ、後追いはダメ、新しい分野を開拓する新しいアイデアを出せ!
訳知り顔でそういうことを言い出す人が出てきそうです。そんなことはみんなわかってるけどできない。だから「革新的」なんですけどね。回答になってなくてすみません。