小田部正明 (Masaaki Kotabe):貴方の質問に似た質問が少し前にありました。その質問は、日本も含めて先進国や新興国での少子化による経済的な低迷下をどのようにすれば抑制できるかというような内容でした。結論としては、日本と同じように少子化の進むアメリカの現在の経済成長をみれば分かるように、寛大な移民政策が経済成長に繋がると思います。私が書いた返答が貴方の質問にも合うので、多少割愛して記してみます。
国連のデータによると、第2次世界大戦後、世界全体の出生率(女性一人当たりの子供の数)は1963年の5.32をピークにして2021年には2.32にまで継続して低下している。同じ時期、アメリカの出生率も3.23から1.78と低下し、日本のそれも2.03から1.37と低下している。東南アジアで最高の経済力を持つシンガポールの出生率も5.12から1.24、隣国の韓国も5.4から1.09と少子化の現象が日本より更に顕著である。日本も人口の減少を抑えるためにどうにか日本の出生率を上げることを考えているようだが、人口を維持するために必要な出生率(人口置換率と呼ばれる)が先進国の場合、約2.1人であることを考えると、手厚い社会保障制度や保育関連政策を導入しても出生率の増加には限界があるだろう。
私の住むアメリカはどうかというと、同じような少子化で人口置換率に達していない(つまり人口が減少する傾向にあるはずなのに)にもかかわらず、アメリカの人口は1963年の1億8450万人から2021年には3億3700万人と増加し、2023年現時点では3億4000万人と確実に増加傾向にある。日本の人口は1963年から2009年のピークの時期で31.7%(2023年レベルでは26.8%)増加したが、アメリカの人口は1963年から2023年で何と84.1%増加したことになる。アメリカは人口が減少するところか、実際には2倍近くまで増加している。アメリカの人口増加は殆ど移民によることが明らかであるとともに、アメリカ経済の成長に多大に貢献していることも指摘したい。
日本の事情はアメリカのそれとは大きく異なるは分かるが、日本の超少子化が継続し国民が老齢化する中で、日本もこれからは今までの制限的な移民制度を抜本的に考え直す時代に入ったのではなかろうか。