彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:5つの味覚を全て備えている生物はそう多くないよ。例えば大部分のネコ科、ブチハイエナ、コツメカワウソ、オットセイ、ニワトリ、ネッタイツメガエル、3種類の吸血コウモリなどは、甘味を感じないことが分かっているよ。ジャイアントパンダは旨味を感じず、アシカは甘味と旨味、バンドウイルカは甘味・旨味・苦味を感じないよ。
もちろん、全ての生物に対して味覚テストを実施したわけじゃなく (コツメカワウソとメガネグマは実際に砂糖水でテストした、という風に実験が皆無なわけじゃないよ)
、これは味覚に関わる遺伝子の調査を行った結果だよ。どの味を感じるのかというのは、根本的には、味覚を感じる役割を果たす細胞が、その味覚を感じるために必要と分かっているタンパク質を持っているかにかかっているよ。タンパク質を合成するには、それについて書かれた遺伝子を持っているかにかかっているから、遺伝子を調べることで、その動物がどんな味覚を持っているのかを推定できるよ。そして味覚は基本的に複数のタンパク質=遺伝子が担っているので、その一部が機能しないのか、それとも全部機能しないのかで随分と差があるよ。例えばネコ科やニワトリは、2つのうちの1つの甘味遺伝子が機能しないけど、ネッタイツメガエルは両方が機能しないよ。
動物がどの味覚を持つのか、というのを遺伝子で調べてみると、基本的な部分は脊椎動物の大部分で共通しているものの、細かいバリエーションが無数にあることから、どうも種の分化でかなり細かく変異していったと考えられているよ。その主な要因は、味覚の主目的である食性にあると考えられているよ。例えば甘味を失った動物は、高度な肉食とよく関連しているよ。ネコ、ブチハイエナ、コツメカワウソ、吸血コウモリは甘味を感じないけど、イヌ、アードウルフ、カナダカワウソ、吸血しないコウモリは甘味を感じるよ。前者と後者を比べると、後者は肉以外の食事をする機会が多くあることから、甘味が機能していると言われているよ。ジャイアントパンダは竹専門なので、旨味を失ったとも考えられるよ。ニワトリやバンドウイルカは、遺伝子レベルで味覚が失われている上に、味を感じる細胞の数そのものが少ないよ。ほとんどかまずに丸呑みする食性では、味はほとんど関係ない、と考えることもできるね。味覚が食性と関係している、というのは、他にも推測する材料があるよ。基本的に甘味は高いカロリーに関連し、苦味は毒物と関連するよ。なのでヒトでテストすると、甘味は最も感じにくく、苦味より1万倍高濃度でないと感じないよ。一方で、苦味に対する敏感さは、肉食動物が最も敏感で、草食動物は最も鈍感であることも分かっているよ。苦味を感じるものの全てが有毒なわけではなく、特に植物は苦味を持つものも多いことから、食物を摂取する機会を失うリスクとの天秤の結果、草食であるほど苦味を感じにくくなった、と考えることができるよ。
ちなみに、いろんな動物を調べてみて、基本の5つの味に並ぶ "第6の基本味"
を主張する研究も近年あるよ。そもそも、今では基本味に数えられる旨味でさえ、1907年にが日本ですでに知られていたものの、遺伝子を調べる技術が進歩する20世紀の終わりまで、基本味と数えられることはなかったからね。では他の味はどうかというと、例えば辛味は基本味じゃないのか?ってなりそうだけど、あれは神経の方に感じる機能があることが分かっていることから、真の意味で味覚とはカウントされていないよ。これはペパーミントの爽やかさとかも同じで、両方とも2021年のノーベル医学生理学賞で調べられた内容だよ。真の意味で味覚に数えられそうなのだと、ヒトはデンプン味、マウスやラットは脂肪味、マウスやショウジョウバエはカルシウム味を感じるのではないか、という主張があるよ。そして、この味を感じるのに必要とみられる遺伝子は他の動物にも存在しているから、他の動物もこれらの味を感じている可能性があるよ。これらが基本味であるのかは現在でも研究中だけど、もしかしたら、ヒトが感じる味以外の味覚を持っている動物がいる可能性も十分にある、ということになるね!