イナダシュンスケ:一般的に言うとインド料理では、脂をトリミングするということはよくあります。実際マトンの臭みはある程度脂に集中しているのは確かだと思います。ただしそれを行うのは通常、加熱前の生の状態です。表面を焼き付けて脂を落とすという手法は（有効かどうかは別として）インド的ではありません。 あとインド料理では、マトンに限らず調理前の肉をしっかり水洗いします。表面のぬるっとした部分を落とすと同時に血抜きも行うイメージで、僕は50℃程度のぬるま湯でこれをやります。これは体感的にもかなり有効で、ついでにこれをすると煮ている間にほとんどアクが浮きません。 これは肉の旨味をある程度犠牲にする（西洋料理などではあり得ない）手法で、それがアリなら茹でこぼしもアリなのでは？ということになりそうですが、実際、そうする店はあります。ただしこれは臭み抜きというより、レストランならではのオペレーションとして必要だからです。つまり、共通カレーベースと具材を別で調理し、それらを合わせてカレーに仕上げるタイプの店のやり方です。ただしその場合普通は茹で汁も同時に使用するので、臭みを抜くための茹でこぼしとはまた少し異なります。 スパイスが肉の臭みを消すというのは定説中の定説ですが、僕はこれにはやや懐疑的です。もちろん多少のマスキングは可能ですが、その効果にあまり期待しすぎない方がいい。臭いものは臭いです。例外的に生姜はある程度はっきり効果を感じます。 骨が臭みの元になるかどうかは、正直意識したことはないのですが、スネやシャンクなどの髄が豊富な部位で表面に露出しているカットだと、確かに影響があってもおかしくないですね。そういう部位なら生の状態で脱骨しやすいので合理的ですし。そして次から素直に骨なしの部位を買えばいい。（本当に差が出るかどうかは何とも言えませんが。） 　 まとめると、インドレストランにおいては、水洗いはおそらくみんなやる、丁寧な店は生肉の状態で脂をトリミングする、特に丁寧な店は徹底的にトリミングをする、というところまでは実際にやられているはずだけど、それ以上のことは特にやらない、という理解でいいと思います。そうやって作られる（であろう）お店のマトンカレーで臭みが特に気にならないのであれば、質問者さんが購入したロットに何かしらの問題があったと考えるしかないのかもしれません。