橋本 省二:東大と京大、超弦理論を研究するのに選ぶならどっち?
私の浅い知識で答えたら袋叩きにあうに決まっています。いや、ほんとによくわかっている人が答えたらもっと危ないですね。人生を左右する大事なことは、こんな無責任な回答者に期待しない方がいいと思いますよ。ともあれ、もしこれから大学受験を控えた高校生の方でしたらまだそこまで心配する必要はないでしょう。大学院を選ぶときで十分です。大学院入試を考えている大学生の方でしたら、先生に直接問い合わせて話しに行くのが一番です。きっと時間を取ってくれるでしょう。
それはともかく、超弦理論。重力理論と量子論を統一する究極の理論(かも)。時間も空間もそこから生まれる。魅力的ですよね。ただし、究極の素粒子理論としての超弦理論は、過去に派手に宣伝されていたような成果を得られているわけではありませんし、近い将来に統一理論が得られそうだという話も聞かなくなりました。実験で検証可能な予言ができない(超弦理論が必要になるエネルギースケールはだいぶ先にある)のが厳しいところで、理論自身の無矛盾性などを手がかりに少しずつ進歩しているというのが(私のような外野から見た)現状だと思います。
それでも最近では、ブラックホールに量子論を適用するとどうなるかという思考実験から始まって、おもしろそうな進展が見られます(「ブラックホールの情報問題」で検索してみてください)。これも理論の無矛盾性を追求する方向の一つですね。この方向で進歩が続くかもしれないし、そろそろ下火になるのかもしれません。過去の超弦理論には、何度か爆発的な流行があって、そのたびにある方向に進歩しました。「第○次革命」とか呼ぶ人もいます。それでも本命の究極理論への道はまだ遠いようです。
質問者の方がまだ高校生でしたら、まだ研究テーマを狭める必要はありません。広くいろんなことを学びましょう。もしこれから大学院で研究室を決める方なら、じっくり考えた上で飛び込んでみてください。その場合も、周辺分野の研究への興味を失わないようにしましょう。超弦理論がこの先どこにつながっているのかは誰にもわからないのですから。