彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:実は "宇宙の匂い" を調べると、いくつかの回答が出てくるよ。ただし、これを答えとして出す場合には、いくつかの注意点を踏まえた上で説明する必要があるよ。
まず、何人かの宇宙飛行士は宇宙の匂いについて報告しているよ。と言っても、当たり前だけど宇宙空間でヘルメットを脱いだわけじゃなく、宇宙空間での船外活動後のエアロック内に関するお話だよ。船外活動から帰還した後、エアロック内は最初は真空で、その後に空気を補充するけど、その時の匂いは船外活動を始める前とは違う、と報告しているので、これが宇宙の匂いだ、と言っているわけだよ。匂いの正確な表現には苦労していて、例えばDon
Pettit氏はそれを「普段食べない肉を食べた時に何でも鶏肉と表現するのと似ている」と例えているよ。その前置きをした上でPettit氏は「心地よい甘さと金属の匂い」「ガストーチで金属溶接している現場と似ている」と表現しているよ。Thomas
David
Jones氏の場合、宇宙の匂いは「はっきりとしたオゾン臭と、かすかな刺激臭」と表現しているよ。実際のところ、これは真に宇宙の匂いかと言われると、注釈が必要になってくるよ。まず、宇宙飛行士が活動する国際宇宙ステーションの軌道では、極めて薄い大気が存在していると言える場所だよ。このため原子状酸素のような、宇宙空間にはほとんど存在しない、大気に由来する極めて反応性の高い分子が存在しているよ。これらは宇宙服の表面を構成する物質と化学反応を起こし、別の分子を生成するよ。宇宙飛行士がエアロック内で報告する宇宙の匂いは、とても薄い地球大気に由来する物質か、もしくはそれらが宇宙服と反応してできた匂い分子であると推定されているよ。
もちろん、これとは別の考えも存在するよ。NASAの関連機関の所長であるLuis Allamandra氏は、宇宙服に付着する物質はPHA (多環芳香族炭化水素)
という有機物であると推定しているよ。PHAは自然界の様々な場所に存在しているけど、最も私たちが意識するのは、何かを燃やしたり加熱した時に発生する特有の焦げた匂いだよ。実は、上記とは別に宇宙の匂いを「焦げたステーキの匂い」等、何らかの焦げ臭だと表現する人もいるよ。PHAは彗星や小惑星といった有機物を含んでいる天体にも豊富に存在し、流星の形で常に地球に供給されていることから、これらが匂いの原因である可能性も排除できないよ。ただし、宇宙服との化学反応でもPHAは生成しうるから、きちんと分析をしない限りは、このどちらかであるか、あるいは両方とも混ざっているのかは決定できないと思うよ。
最後に蛇足。最近、宇宙の匂いであるという売り文句で販売されている紅茶があるよ。これはフレーバーにギ酸メチルという物質を使っているよ。これは柑橘類の匂い成分の1つであるよ。そして、銀河系の中心部にある星雲の1つ、いて座B2の観測で見つかった分子でもあるよ。ギ酸メチルは宇宙に存在する物質だから、紅茶のフレーバーの売り文句に使った、というわけだね。ただし要注意。ギ酸メチルはあくまでいて座B2で見つかった50種類ほどの分子の1つでしかないし、他の星雲を観測すると更に多種多様な分子が見つかるよ。その中には固有の匂いがないものもあれば、かなり不快に感じるもの、あるいは毒になり得る分子も存在するよ。そして仮に、いて座B2までワープして鼻をクンクンさせたところで、分子の密度は薄すぎるので臭いを感じることはおよそ不可能だよ。ということで、これはあくまで商品を売るための宣伝程度であり、実際にはもっと多種多様な匂いがしてもおかしくないはずだよ。