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「人生は好きなことに注力しようといっても、好きなことが特にないならどうすればいいのか。また、少数のことに注力したら人間の幅が狭くならないか。多数のことが得意な人を見るとうらやましいがどうすればいいのか」という質問だと理解しました。

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なにごとも、やってみなくちゃわからない」というのが初めに感じたことでした。何事にも関心が持てなかったり、特に趣味がないという方はたくさんいらっしゃいますが、その中には「何も試してこなかったから、そもそも世の中にどんなものがあるのかを知らない」という人もいると思います。

なにごとも、やってみなくちゃわからないものです。ちょっとでいいから試してみる。試しにやってみることで「やっぱりつまらない」になるかもしれないし「意外におもしろいな」になるかもしれません。

もちろんそういう活動は強制されたらつまらないものですし、義務感からやってもおもしろくはありません。ですから私も「おすすめ」するだけです(強制などそもそもできませんけれどね)。

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ほかのひとと、くらべてみてもしょうがない」というのが次に感じたことでした。確かに、多趣味で何でもできる人はいますし、フットワークが軽くて上手にこなし、いつも人生を楽しんでいるように見える人はいます。

うらやましくなる気持ちはよくわかりますけれど、真面目に考えてみると、ほかのひとと、くらべてみてもしょうがないですよね。特に「好きなこと」や「おもしろいと思うこと」は人によって違います。楽しむペースも、スピードも、まったく違うものです。

「あんなふうになりたい」と思う気持ちが起きるのは避けがたいですけれど、それを追求し過ぎると、かえって自分自身がどこかに行ってしまいます。これをやれば楽しいはずだ、これを続ければ喜びが生まれるはずだ、なぜならあの人もそうやっているから……などという考えに染まりすぎると、結局は、自分を見失います。

自分の心の深いところまで「何か」が届かないと、深い喜びにはなかなか至らないものです。マイペースで、他人と比べすぎないようにして、いろんなことを試してみる。そして「これは好きかも」という何かとの出会いを期待するのが現実的だと思います。

よい出会いがありますように。

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結城浩

EngineerWriter

本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。文章を書くこと、学んだり教えたりすること、プログラミング、数学、人と人とのコミュニケーションなどに関心があります。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。アマゾンの著者ページは https://link.hyuki.net/amayuki にあります。なお、私は数学読み物を書いていますが、数学科出身でもありませんし、数学の研究者でもありません。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。〔ゆうき・ひろし〕